タイム・スリップ
[作者:えりんこ]
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〜32章〜
未来は覚悟していた。
もうここにはいられないということを。
だから、今日は必死で手伝った。
なんだか手は白くならないし、体は軽いし。どうやら神様はもう少し未来のワガママを聞いてくれそうだ。
「未来!これ、運んでくれない??」
未来と呼ぶのは正宗しかいない。
「はい!」
この時間が永遠と続けばいいのに、そう思った。
でも、時はどんな科学者でもとめることはできない。
だからありったけの元気をここで全部出してしまおう。そう思った。
「でも果たして正宗さんは、私が消えること知っているのだろうか。」
未来はふと感じた。
また明日も未来が起こしてくれるし、とかライブ楽しみだな〜。とかぐらいにしか感じてないみたい。
でも、いいや!それでも。
そう思いながら、スピッツの出番を待っていた。
「よっしゃ!みんな行くぞ!」
テツヤの掛け声で、スピッツの演奏は幕を開けた。
客席で座って未来は演奏をじっと見つめていた。
「なんだか全員が楽しんでる!すごい!楽しい!」
未来は興奮した。でも目を閉じてじっと聞いていた。
歌っている正宗が、ずっと未来に視線がいっていたのを明浩、テツヤ、龍男は確認していた。
そうしてあっという間に演奏が終わった。
目を閉じて聞いていた未来の目から、一筋涙が光った。
評価も前回より良く、スピッツ一行は有頂天で帰っていく。
「あー!楽しかった!!」
龍男が鼻歌を歌いながら言った。
「ホントにそうだな〜! おい、正宗!! お前どこ向いて歌ってんだよ!!」
テツヤも龍男に同情し、正宗をからかった。
「どこ見てたって、客席じゃん。当たり前だろ!何言ってるの??」
正宗は真面目顔で答えた。すると、
「ぷ。お前ずーっと未来ちゃん見てたくせに〜!」
明浩が追い討ちをかけた。すると、
「ち、ち、違げーよ!!」
「うわ!図星だな! かなり焦ってるよ!」
テツヤがクスクス笑って、正宗をからかった。
「もう!なんだよ!みんなして!!」
からかわれている本人もすごく嬉しそうだ。
すると、
「ガタガタッ。」
何かが落ちる音がした。
正宗が後ろを振り返ると、未来がしゃがみこんでいた。
「え! 未来!?」
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