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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■34

あのホタルと手を繋ぎながら駆け抜けた夜
ホタルの頬に繋がる一つの涙
小さな手の冷たい温度

感覚はすべて僕の左手から溢れんばかりに記憶、となって甦った
僕は家の扉を背に、眼から溢れる涙を拭いもせずにひたすら流した

思い出せば思い出すほど切なくなって、恋しくなって、会いたくなって
終わってしまった夏を唇とともにギュッと噛みしめた

僕は靴を脱ぎ、部屋に戻った
良かったことに家族はみんなまだ寝ている

部屋に戻ると「めざせ合格!」の憎たらしい張り紙がまだあった
僕は鼻で少し笑って灯りをつけて勉強机のイスに座った
やってやろうじゃないか、合格。してやるよ。不思議と闘志が湧いてきた
シャーペンを手にして、無我夢中となって僕は勉強を始めた

ホタルの憎たらしいぐらいに愛らしい笑顔が甦った
左手に持っていた参考書を僕は手放して薬指を見つめた

ホタルの甘い香りがした
夜の匂いと、風の冷たさとあの笑顔のぬくもり
すべてがこの指につまっているような気がした

「ホタル・・・・」そう僕はつぶやいた
そうして僕は優しく薬指にキスをする

夜は明けて、朝が来た
夏は終わって季節はまた巡ろうとする

それでも、僕の腕時計の針は変わらずに同じリズムで動き続ける
それでもあの夏は、終わることなく僕に語りかける
あの原っぱでは、また今日も夜がくる


終わることなんてないんだ
変わることなくいつまでも僕の中で輝きつける夏になる


〜あとがき〜

長くなっちゃった、
読んでて疲れるよね?ごめんなさい。
でももっと書きたいことが本当はいっぱいあったの。
その後の、カズマや啓太や淳平の反応。
進路のことや、ホタルの過去のこと。
聞きながら読んでくれると嬉しいです

自分では、けっこう好きな作品になりました。
前作の「スパイダー2」とどっちが良いかな?
自分では分からないけど、片方でも良いから気に入ってくれるといいな

感想とか、批判とか、質問とか、「文、変!字間違ってる!」とか
なんでもいいから言ってくれるといいな。

次はどんなの書こう。楽しみです。

ほんとうに、ありがとう

↓目次

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