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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■6

夜のひんやりとした空気が汗ばむ体を冷やす
火照りを、覚まそうと必死になっている自分に気づく

左手をじっと見つめてみる
「赤い糸・・・か。」小さく呟く

    誰にでも、その小指には、運命の人と赤い糸で繋がってる。
そんな、馬鹿馬鹿しい。
そう思いながらもやっぱり願ってしまう
バカの一つ覚えみたいに、必死に祈ってしまう

「カズマ、」ホタルが周囲に蛍を浮かばせながら僕に言う
「・・・ん?なんだい?」
「今、何て言ったの?」
まるで、僕の心を見透かしているかのように。ホタルは聞く

「いや・・・僕の、指にも「赤い糸」ってのが付いているのかなぁって
そう、思ってさ。」
僕は、握っていた手のひらを、ギュッと開く

「赤い糸・・・」
ホタルはそう言いながら、僕の手を触る
やわらかく、冷たいホタルの手が、僕に触れる

僕の手をホタルは耳に当てる
「カズマの音がする・・・どくん、どくんって言ってる。
すごい、キレイな音・・・  あったかい。」

さっきまで、握っていたから僕の手があたたかいのか、
それとも夜風に吹かれていたホタルの手が冷たいのか
どっちが正しいのか、僕には分からなかった

僕の手を、耳から離してホタルはギュッと僕の手を握る
大切な物のように、大事にそっと。

「大丈夫だよ、カズマ。私には見えるよ。
ほら、、、、、 ここ。赤い糸が繋がっている。」
僕の小指を彼女が小さなその両手で、触れる

デタラメなんかじゃなく、多分彼女には本当に見えているのだろう
僕の、小指からどこかへと繋がっている細く、弱々しい糸が。

僕には見えない、細い糸が。



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