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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■7

「知ってる?指にはね、一つ一つ意味があるんだよ。」
ホタルが僕の手を握ったまま、言ってきた
個人的に・・・かなり興味がある内容だったので詳しく聞いてみた

「親指は、自己主張や権力を、
人差し指は、願いや夢を
中指は、インスピレーションや、対人関係を
小指は、自己アピールや、お守りを意味しているの。

指輪をはめる時は、自分に合った場所につけると良いんだよ。」

「・・・薬指は、どういう意味なの?」 
こんな、分かりきったコトを聞く自分が嫌になった
でも、彼女の口から言って欲しかった

「薬指は、愛と創造性。
結婚指輪とか、だからここにはめるの。
指だけじゃなく、右手、左手によっても意味は変わるの。」

「詳しいね。ホタルの指には、
・・・・赤い糸が見える?」

僕は思い切って聞いてみる
彼女のその白く小さな手に、運命をつかさどる糸がついているのか。
だとしたら、それは誰なのか。

・・・僕であれば良い。この出会いを運命としたい。

ホタルは、自分の手をじっと見て、薄く笑いながら言った

「なんにも、見えないよ。
私には、運命なんて夢見る資格なんて無いもの。」

ホタルは確かに少しだけ笑いながら言った。
声色は多少、明るそうだが 少しだけ肩が震えているのが僕には分かった
「そんなこと・・・・!!」
僕は、そう言いかけて 言葉をつぐんだ

「私には、明日を夢見る資格なんて、無いもの。
もう、何も無いの。」

ホタルが、俯きながら、肩を震わせる
「・・・ホタル?」僕がそっと問いかける
彼女は僕の言葉に耳を傾けようとはしない。

「・・・朝なんて、来やしない。夜のまま、
ずっと私は、夜の中でしか生きれないのよ。」

ホタルのコトをかがんで顔を覗き込んでみる
目にいっぱいの、涙が溢れていて 今にも零れそうだった。



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