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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■18

気がついたら僕はいつも一人なんだ
追いかけようとしても僕は君みたいに早く走れない
必死に手を伸ばしても、ホタルには届かない

手を伸ばして、何か掴もうとして、手を思い切り握りしめる
そこで、ハッと目が覚めて、
一人で夜の暗闇に呆然として立ちつくしている
何かを握りしめたはずの手を開けてみると、
僕の手から金色の光を放ちながら、鮮やかな蛍が舞い上がる

蛍ですら、僕の元から離れてく

気がついたら、僕はいつも一人ぼっちなんだ

ホタルの冷たい手に触れては、彼女を温めたいと思う
でも、僕がいくら握りしめても抱きしめても、
彼女の体温は少しも温まる気配は感じ取られない

人は、誰かのぬくもりに触れると安心する、って聞いた事がある
寂しいときや、辛いときは誰かの肌に触れるだけでも落ちつくってどこかで聞いた
そんなのデタラメだ、なんて思ってたけれどやっぱりアレは本当だ。

ホタルの肌の冷たさが、こんなにも寂しい。切ない。




手をいくら伸ばしても、
どんなに速く走っても、
いくら、君を大声で呼んでも、
どんなに強く抱きしめても、


君は、両手をするりと抜け出して、夜の方へと駆けていく
時折、こっちの方をチラッと見て、クスリ、と笑う
そしてまた、振り返りもせず、走り出す

夜へ、夜へ、夜へ、夜へ!!
唯一、輝くことのできる夜へと。

走り出すのだ。最初は僕の手を引っ張りながら、
そして、ゆっくりと手を振りほどき彼女は一人で走り出す

わき目もふらず、ただひたすら前へ、夜へ、闇へ、突き進む

もっとゆっくり走ってよ
僕がそんなに速く走れないって知ってるんだろ?

待ってよ、

おいてかないで。



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