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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■22

僕にはそこから先の記憶は断片すら一つも無い。

「やばいよ、あそこ。絶対に≪居る」って。」
啓太が声色をわざとか、分からないけど変えてそう言う
「≪居る」って、まさか。」僕は啓太の顔をじろりと見る
「幽霊、だよ。」ニヤリ、と啓太は笑う
「でも、さ。非科学的だよ。」僕は、言ってみる
幽霊なんかいるはずない。あんなのデタラメだ。

「あそこ、その事故後。死体を処理した後、事故が相次いだんだってよ
しっかりと組んだはずの足場が崩れ落ちたり、
ちゃんと繋いでおいた上から鉄の塊が落ちてきたり、
ベテランの人が足を踏み外して転落してしまったり。
ろくなこと起きないから、あの工事現場あのままなんだって。気味悪ぃ話しだろ。」

僕は言葉が出ず、コーヒーをまた一口、口に運んだ
「もう、良いだろ。この話は。無かったことに・・・」
僕は、傷つくことを恐れて啓太にそう言う
「・・・そうだな、もう。終わったことだし、な。」
「ああ・・・」

しばらくの沈黙を僕らはお互い、個々の飲み物を虚ろな目で飲んでいた

なんか、話題ふらなきゃ。と僕は変に責任感を感じ話を切り出す
「けっ、啓太。進路とか決めた?」
「あー俺?俺さ、下に兄弟3人居るじゃん。兄貴も1人居るけど。
だから家計助けるためにも親父の仕事、手伝おっかな、って。」

「あー、何してんだっけ?親父さん。」
「ん?技師。鉄とかでいろんなもん作ってる。」
「向いてるんじゃね?」僕はそう言って笑いかける。
「カズマは?大学行くんだろ。どこ狙ってんだよ。」
「あー、K大とか、F大かな。一応いまんとこ」
「あ、お前さすがだな、勉強出来てたしな。羨ましいよ。
俺、妹とか、弟にはちゃんと大学とか行って、出世してほしいし。本当に羨ましいよ。」啓太はそう言う
その後、俺らは普通のことをえんえんと話しあって、別れを告げた。

時計は2時を過ぎていて、気がついたら店内は他の客でいっぱいだった



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