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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■31

懐かしく薫る花の香りがしたような気がして僕は眠りから覚めた
瞼の裏に金色の眩しい光がちらついてきて僕は朝だと思った

僕の腕からホタルがいなくなっていた
僕は眠かった眼を冷水でこじあけたようにして起きた

体勢を整えて、僕は上半身を浮かせた
ホタルが、居ない。
立ち上がった僕は辺りを見回した。東の空はまだ、蒼白い月が浮かんでいた
後ろから、西の方角から光を感じた。
さっき僕が感じたあの金色の眩しい光と同じ輝き・・・

後ろを振り返ると眩しくて一瞬、眼が眩んだ
ふらっとよろついて、しっかり立ち直して手の指と指の隙間から光を覗き込んだ

宙に1,2メートルぐらいありそうな大きな金色の渦が浮かんでいた
僕は眩しくてあまり、よく見えなかったけどそれでもその光の塊を見続けた

眼が慣れてきたとき、僕はしっかりとそれを眼に焼き付けた
・・・・ホタルが、浮いてる?

翳していた手はいつのまにか下に垂れ下がっていた
眩しい光に僕は瞬きもせずに、呆然と見続けていた
不思議と、「怖い」という感情は生まれて来なかった
ただ、僕は渦の中で眼を瞑り、浮かんでいるホタルと、揺れているホタルのワンピースのすそを見つめた

ホタルは女神や天使のように、ゆっくり目を開けてニッコリ哀しげに笑った
そして、僕にいつものように手を差し伸べた
僕は甘い香りに誘われる蝶のようにして手をホタルへ伸ばした

伸ばした手の指先から細い金色の糸がつながった
その細く弱々しい糸は僕らを引き合わせるかのようにして長く、伸びていってホタルの指先へと繋がった
闇に包まれたこの場所ではその糸は、鮮やかに鮮明に儚くうつって
僕らを繋いでいった
そして、僕は宙へ舞った



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