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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■32

僕は自分が宙に浮いていることにゆっくり気が付いた
でも別に驚きもせず、怖がりもせず、当たり前のように少し笑った

ホタルの目線の高さまで届いたら、光は僕たちを優しく包んだ。その中では木々のざわめきも何も聞こえなかった
まるで星になったみたい、と言いたげな口元をしてホタルは僕に笑った
僕はホタルの手を取り合って、優しく、だけど強く抱きしめた
ホタルは僕の腰に手を回し、ギュッと僕を抱きしめた

背の低いホタルは僕を見上げて、唇に優しく手を当てた
それはまるで何だか懐かしいの合図ような感じで、僕はホタルの唇に、小さな、だけど永いキスをした
ホタルも僕のキスを受け入れて、目を瞑って薄く微笑んだ

キスを終えるとホタルは僕の腕をきゅっと掴んで僕の見つめた
そして口パクで一言、二言呟いた
僕には聞こえなかったけれど、口の形で何を言っているのか、分かったような気がした

「サ・ヨ・ウ・ナ・ラ」 「ワ・ス・レ・ナ・イ・デ」

「ア・イ・シ・テ・ル」

僕はホタルの唇を見つめて、その言葉を感じ取った後僕も愛してる・・・と言おうとしたが
それだけじゃなく、もっともっといろいろなことを言おうとしたが
ホタルはどんどん空高く、僕はゆっくりと地上に下降していった

待って 行かないで まだ言いたいことがあるんだよ。
伝えきれない思いや言葉たちが喉の奥深くから湧き上がってきて
僕は必死にホタルの名を呼び続けた

だがそんな僕はお構いなしにホタルは空高く、金色の光と共に昇っていった
待って、行かないで、ホタル・・・・

言いたいことがまだいっぱいあったのに、もっと抱きしめたかった
ホタルと話をしたかった、そんな気持ちが僕の中をぐるぐると渦を巻くようにして巡った

そして僕は再び目がさめた



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