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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■5

ホタルが止まり、僕も止まった。
息切れの中、目の前に広がる世界は、
確実にこの世のものとは思えなかった

たくさんの蛍が、光を放ちながら宙を舞っていたのだ

ぼうっと浮かぶ鮮やかな黄色い、光に僕は、心を奪われて
ひたすら目で 鮮やかなホタルを追っていた

「キレイでしょ?あたしだけの、秘密の場所なの。
誰にも言わないでね。2人だけの秘密よ。」
ホタルはにこにこしながら僕に語りかけた

「・・・キレイ。」
僕も思わず口からコトバを出して、呆然と立ち尽くしていた
「でしょ?」ホタルも微笑みながら、ふわりふわりと、蛍の様に舞っていた

ホタルが動くと、蛍もそれに釣られて夜空を舞う
ホタルが止まると、蛍は止まり、彼女に寄り添うかのように浮かび上がる

彼女に合せて、蛍は踊りだす
不思議と、ホタルが妖精に見えた



風が止む
静けさに包まれる
僕は、こんなに静かな世界を見た事がない
僕の心臓のリズムが聞こえる
どくん、どくん、と狂うことなく一定のリズムで脈をうつ

呼吸の音が聞こえる 生きている、と実感する。
彼女の呼吸の音がする。   
他は何も聞こえない、聞こえるのは
僕らの呼吸の音だけ
≪世界に、僕らだけしか居ないみたい。≫そんな甘い想像を繰り広げる

それだけで、良いじゃないか。
ココに君が居て、僕が居る。それで良いじゃないか。
僕はそれだけで、もう・・・・十分だ、

他は何もいらない。
君さえ居ればもう、どうでもいい。
君しか、いらない・・・

不思議だな、今日初めて会ったというのに
初めてと言う感じがしないんだ
なんでだろう?
まだ出会ってから   1時間もたっていないだろうと言うのに。
それなのに、前に会ったコトがあるような気がするんだ



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