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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■11

ホタルはもの凄いスピードで、草むらの中を走る。
夜と、朝の間を 僕らは駆ける
朝が来るから、それだけを理由に僕らは走る

右足、左足、また右足。
一歩ずつ草むらを踏みしめる

さっきまで辺りを漂っていた蛍も光が薄れていく
夜が、ひとつ終わる
また朝がひとつやって来る

夜の間しか輝けない蛍には、心の隅っこでサヨナラを言う

ホタルの手をしっかりと握る、離れぬように
少しでも、手を離してしまえば 
そのまま引き裂かれてしまって会えないような気がして。


星が、月が、夜が、ぼんやりと薄くなっていく
ゆっくりと西に、落ちようとしている

そういえば・・・「朝のリレー」って感じの詩があったよな、
朝は、さまざまな所からやってきて、別の場所にバトンを渡すかのようにして
夜が明ける、朝が来る。
世界中 どこにでも朝は来る


どのくらい走っただろう?分からない。
また、なんだか頭がぼうっとする
さっきみたいに くらくら視界がぼやける
大丈夫、大丈夫。まだ、いける

手を放しちゃいけない。絶対に
ホタルと約束をしたんだから
放さないって、ずっとずっと放さないって 確かに僕は言ったんだから。



「手を・・・放したら、会えなくなるよ?」


どこからかそんな声がした気がした。
ダメだ、放してはいけない。 と、正気に戻る
僕の頭のつくりは単純で、
ホタルのためならどんなに寒い夜でも、フラフラの頭でもまだまだ走れそうな気がする

ただ、横にホタルが居るというのなら。
僕の横で、その黒い髪をなびかせながら小さな声で唄って
そして、指を絡めあわさせて。
君との体温を溶かし合って微かなぬくもりを感じて
肩を並べて、一緒に眠りの世界へと堕ちてしまいたい

夜のまま、2人だけの夢の世界



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