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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■19

なんだろう、冷たい。
これは・・・水?
僕の肌に、頬にすうっと一滴の水が零れ落ちる
ツウーっと、頬を滑り落ちて、雫の反動で下の地面に波紋が広がるようになってく

あぁ、僕は寝てるんだ。
ここはどこなんだろう。
目を開けるのもおっくうだ、

光を感じる
朝?
ホタルは?
ホタルはどこ?

冷たいものが僕の肌に触れる
ひんやりとしていて、僕の熱を奪う。気持ちいい。

また一滴雫が僕の顔に触れる
唇の近くに零れ落ちたんだろう。

この水はなんだろう、
舌を出し、舐めてみる
危ない毒薬では無さそうだ

だって、生きてる。

しょっぱい、塩水?
いや、これは・・・涙だ。

僕の頬に触れた冷たいものに僕も手を触れてみる
細くって、柔らかい。
目を瞑ったまま、手を上へと移動させてみる

あ、これは人だ。
目を、ゆっくりと開けてみる
眩しくてよく見えない。でもこのシルエット、見覚えがある。
そうだ、あの時。

6年前の中学・・・一年生のとき。
あの時もこんなことがあった

しなやかで、白くって、柔らかいこの肌にあの時、
確かに僕は触れたんだ

「カズマ」
ぼんやりとした声が僕の脳内で響く

・・・ホタル?
「カズマ、お休み。今日はもうバイバイだよ。」

ホタルなんだろ??聞こえてるんだろ?
答えてよ!返事してよ!!

「お願い・・・、もう少し、何も知らないままで居て。」

ホタル?ねえ、ホタル!?
何があったの??

「夜が、明けちゃう。もう行かなきゃ。」
待って!!ホタル!!行かないで!!

そうして、僕は手を伸ばし、目を覚ます。



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