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夜を駆ける2  [作者:あつこ]

■4

冷たい夜風が僕の体に染こんでいく 
青白く浮かぶ月が僕の心を蝕める
体も心も、夜に奪われて僕はいつもの
「昼の世界の生き物」から 「夜の生物」に生まれ変わる

血までも凍るような冷えたぬくもり
とろけて無くなってしまいそうな、君の吐息が草原に響く

この出会いは「運命」だったら良いのに、と当ての無いコトを頭の中でめぐらす

       赤い糸

本当にそんなものがあるのだろうか?
こんな夜に僕ら、出会ったのは運命なのだろうか?
からめたけれど、ぬくもりすら残って居ない 左手に優しくキスをする

この指の先には赤い糸がついていて、誰か「運命の人」に繋がってるのだろうか?

赤い、糸が見えたら良いのに。そしたら相手を探るんだ
ホタルなのかもしれない、僕の運命の相手はホタルなのかもしれない
甘酸っぱい夢を、広げて僕は空を仰いだ
見上げた空の星が、果てしなくキレイだった





ホタルに引っ張られて僕は、ひたすら走っていた。
足ならけっこう、自信あるんだ。 
中学の時は陸上やってたんだ。 県大会目指して頑張ってたんだけど、
西中の松崎ってのがめっちゃ足速くって どうしても追いつけないまま引退しちゃったんだよ
もう、3年も前の出来事か。

3年前かぁ、中3じゃん。時間が過ぎるのは早いよな。
もう大学受験とか言ってるだもん。
あの時じゃあ信じられなかったよな。

中学校か、何があったっけな。
体育祭、合唱コン、文化祭、修学旅行。
友達とのケンカ、 初めての恋、 進路の悩み いろいろあったなぁ。

なんだっけな、中2かな?肝試しやったんだよ。みんなで。
こんくらいの季節だったんだよ、暑い夏の日。
忘れちゃったな、何だったけ。気になる。

ホタルは中2かな?14歳だって言ってるし
あの頃の僕と同い年か。
4年って結構、長いんだな


・・・赤い糸、か。
なの、現実にあるわけないじゃん。何言ってんだ、自分。
僕は、そう思いながら、左手の小指を横目で見てみた。


からっぽだった



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