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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 26

さなみ、と優しく彼が私の名前を呼ぶ
何度も飽きるほどに聞いた名前も今は愛しく思える


「圭ちゃん、私彼氏なんて居ないの」


圭ちゃんの顔は少し引きつって言う「えっ?」

「今日、兄が実家からここまで上京してきたの。
だから兄が予約していたホテルまで案内したの、それだけ。」

呆然としたような顔で圭ちゃんはクスリ、と笑って呟く
「なんだぁ、・・・勘違いかぁ。カッコ悪いなぁ、
でも、良かった。」

「もっと前からお兄ちゃんのこと、紹介しておけば良かったね。
したら心配しないですんだのに」私がそう言って笑うと圭ちゃんは優しく笑った

懐かしい圭ちゃんの匂い、肩と背中の感じ、優しい笑顔
私、この人が好き。本当に本当に、本当に大好き。

ありきたりな言葉しか出てこないけど、私はこの人に気が狂いそうなくらい恋をしている

好きだ、そう改めて実感すると恥ずかしくって、なんだかくすぐったい
圭ちゃんの呼吸と心臓のリズムが聞こえる こんなに密着しているからかな。

でも、好き。だから恥ずかしくっても狂ってしまっても、抱きしめ続ける
ずっとこうしていたい。世界が美しく見える。
このまま、美しいまま世界が終わってしまえばいいのに。
時が止まってしまえばいいのに、本気でそう思う

風の音が聞こえる、圭ちゃんが私を抱きしめる。だから私もより強く抱きしめる




「さなみ、好きだ」


圭ちゃんの口から初めて溢れる愛のことば。
何も言葉が出ない、嬉しくってしょうがない。涙だけが馬鹿みたいに出てくる
好き、好き、好き。私はこの人が好き。

思いだけが溢れて来る、圭ちゃんに伝えたい。
なんて言えば伝わる?喜んでくれる?図書館の本にはそんなこと、一つも書いてないよ、
ありのままを、簡単に伝える

「私も、好き」

好き、愛してる、結婚してくれ、そんなんじゃあ駄目だ。
でも、好き。好き。好き。
他に言葉が思い浮かばない。


足元に何か、感じた。
視線をフッと落としてみるといつもの野良猫が寄り添ってきた

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