スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説SUGINAMI MELODY>19

SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 19

ケータイの着信メロディが鳴る。
私が好きな映画の主題歌。
ネットで探してダウンロードするのに一手間かかったから妙な愛着が湧いていた
電話の相手は、あ、武兄ちゃん。

「はい、さなみです。どうしたの?」
久しぶりに聞く武兄の声はカラッとしていた

故郷の母さんの病気がだいぶ良くなった
今、新幹線の中にいるんだけど、
あと1時間ちょっとでそっちに着くんだ。
俺は東京とか来たの初めてだから、地理がどうもつかめない。
とりあえずおまえんちの近くのホテルに宿を借りたから
そこまで連れてってくれないか?どうせ暇だろ。

ぶっきらぼうにそう笑いながら言って私はふてくされてしょうがないな、ランチ奢ってよね。と
冗談を言い合いながら電話を切った

11時にでも家を出れば十分間に合う。
思いっきり高いの奢らせてやるんだから。私はふふふ、と笑って化粧ポーチを手に取った

ファンデーションとリップクリームとアイライン。
簡単に薄く化粧をして、ジーパンを履く

良かった、母さん良くなったんだ。
故郷は長野県のちょっと田舎の方の街。
そこで次男の武兄は東京の会社に勤めていた
でも母さんが病気になってしまって、武兄は仕事をやめて長野に帰って母につきっきりで看病を。
そのかいあってか母は次第に回復していった
それに上の信兄ちゃんが結婚をして同居することになったので
家のほうは長男夫婦に任せることになったらしい

良かった、本当に良かった。

そういえば何で武ニイは東京に来たんだろう?
またこっちで就職するのかな?それより早く結婚すれば良いのに。

私も人のこと、言えないか。
そう思いながら時計を見ると11時になろうとしていた
そろそろ行こうかな、そうしてアパートを出た

どこかへ出かけるのなんて久しぶり。
久しぶりのお出かけの相手が兄っていうのはちょっと寂しいけど。

行く途中並木道の下を潜った、旅人さんは居ないかな?
探してみるとベンチで座って猫を膝に置きながら眠っている人が居た
起こすのはかわいそうだから、そのままにして
小さな声で「行って来ますね」と声をかけてみた

膝の上で寝ていた野良猫が起きてあくびをしてこっちを睨んでいた



↓目次

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】【14】【15】【16】【17】【18】【19】【20】
【21】【22】【23】【24】【25】【26】【27】