スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 18

眼は真っ赤に腫れていた、
鏡の中のボサボサ頭の真っ赤に腫らした眼をした情けない自分を見て少し笑った

目薬をつけて、トーストを焼いて洋服に着替えてテレビを見た

きれいな女性がおしゃれな格好をして、おしゃれな町とお店と食べ物を紹介していた

チャンネルを変えると、芸人達が【有名な下町の老舗ラーメン屋】でラーメンを頬張っていた

なんだかくだらなくなってきた、音楽でもかけよう。いつもの圭ちゃんが忘れていったCDでも。

コンポに近づいてCDを入れた、いつもの音楽。
英語の曲で、何て言ってるのかは分からないけど、心地よく感じた
テーブルの上に、緑色と、うすい桃色の折り紙が何枚か散らばっていた

手が寂しかったから、圭ちゃんから教わった風ぐるまをつくった
ベランダに出てみると、冷たい風と暖かい日差しが香った
風に揺られて、風ぐるまがくるくると回った

ベランダから下を見ると、1回に住む人の庭にキレイなコスモスが咲いていた

昔、まだ圭ちゃんが私の傍にいたころ約束したんだ
「ずっと傍にいる」って彼は言っていた
それに彼がこの街を出て行く時、彼は私に約束してくれた

「必ず帰ってくる、だから待っていて」

圭ちゃんのいつも使っていた万年筆で書いたような筆跡だった
彼の字は細く、とんがっていて急いで書いてもキレイに見える素敵な字が、
私と契約を結んだのだ。

大学を卒業しても、就職してもその約束だけを心の頼りにしていたのだ。
もし、あの人が本当に圭ちゃんだったのなら
私は今度こそ、いや、やっと幸せになれる。
4年間の寂しさがここで報われるのかもしれない。

何度か、素敵な人に交際を求められた
でも、そのたびに圭ちゃんの笑ったときの優しい目が降りかかってきて、
どうしても圭ちゃんを忘れることが出来なかった

結局、私には圭ちゃんしか居ないのだ。
春のあたたかい日差しを浴びた朝も、
夏の暑い真昼の時も
秋の木枯らしが冷たい夕方も
冬の寂しい夜も

いつだってあのスープとCDと竹とんぼと折り紙の風ぐるまに助けられていたようなものだ

もう私には選択肢は何一つ残っていない。
あとは、あなたが来るのを待つだけ。

ずっと待ってるから、出来るだけ早く来て。

大きなつむじ風が吹いた、目の前を枯れた落ち葉がよぎった
涙が出てきた 止まらない。なぜだろう?
服の袖のところで涙を拭った

風ぐるまがカラカラといいながら回っていた



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