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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 14

その後、私は部屋を片付けて、明日の準備をして、すぐベッドに入った
スープを微笑みながら飲むあの人の姿が瞼に映った
喜んでもらえて良かった、また今度話してみたいな。ぼうっと右脳の奥の方で虚ろに考えていた
ベランダの窓はカタカタなった 風が音をならしていた
街灯の明かりがカーテンから射し込んできて、私は寝返りを打ちつつ、夜の闇に溶けた

朝はいつもと同じ時間。目覚ましがなる1秒前に起きれるようになった
起きたら眠い眼のまま顔を洗って、朝ごはんのしたく

今朝はご飯を炊いた。
ご飯と豆腐とわかめのみそ汁。あとスーパーで買った漬物を少し。
おかずは一昨日の夕飯の残りの煮豆を。
お茶を飲んだら今日もジョギングへ、いつものコース

並木道の下をくぐる、朝の陽の光が零れ落ちて美しい、なんて詩的な表現を採り入れてみたり
いつのまにか走るペースは落ちていた、ゆっくり歩いていた
空を見上げたら怖いくらいに真っ青なキレイな朝の空
ベンチには誰も居なかった、私は脱力感とゆるい気持ちに押し潰されそうになってベンチに座る

落ち葉が一つ、また一つと落ちていった

「ねぇ、圭ちゃん。また冬が来るね」
私は1人で呟いた、なんだか可笑しくなってきて少し笑えた
横に居たらいいのにな、圭ちゃん。会いたいな。

5年前のことを思い出した
大学3年生の日のこと。私と圭ちゃんは映画を見に行った帰りで
映画館の近くの美味しい、と噂のパン屋さんで
2人分のちょっとゴツいフランスパンを買って私の家で食べようという話になった
その時、この道を通った私は「落ち葉がもう散っちゃうね、なんか寂しいなぁ」なんて言うと圭ちゃんはニッコリ笑って
「春への準備・・・と思えば哀しくなんかないよ、」と私に言った
圭ちゃんはいつも私の頭では考えきれないような難しいことを言う、
「それってどういう意味?」とか聞いてもいつも笑ってはぐらかした

今となっては分かる気がする、春への準備か。
春になったら緑をいっぱい咲かせて涼しげな木陰にしてくれるんだ。そう思うとなんだか春が楽しみになった

「旅人さん、居ないのかな?」と私は思いながらポケットのケータイを出して時間を見た
やばい、もうこんな時間。
私は走ってアパートへ戻った。

帰って、シャワー浴びて、化粧して着替えて・・・ああ時間が無い。

私は結局、仕事に遅刻をして上司の高村さんにこっぴどく怒られた

でも、起こられてる間は適当に「はい」「すいません」「以後気をつけます」
と相槌をして今日の晩ご飯のメニューなど考えていた

今日は何にしよう、
イタリアンとか食べたいな。貝のスパゲティにしようかな。
圭ちゃんも好きだったよな、確か。

そんな事考えながら小言を聞いていたら
「話してるのにニヤニヤするんじゃない」とまた怒られた
私はすいません、と一つ謝ってまた考えた

旅人さんも、貝好きかな?喜んでくれるかな?
明日は仕事お休みだから今日はいっぱい喋れるなぁ。嬉しくなっていた

私は自分の中の異変にまだ気づいていなかった



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