スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 5

今朝のメニュー、
コーヒーにミルクと砂糖を入れたのと、
パンにマーガリンとブルーベリーを少し塗ったのと
スクランブルエッグと、ベーコンと、
トマトやレタスのサラダ。セロリはもちろん、入ってない
それと、キャロットジュースを一口。

おなかが膨れたら最近ちょっと太ったからジョギングをしに外へ
圭ちゃんと一緒に歩いた並木道を通る
ここを通ると圭ちゃんを思い出し、涙が出そうになる
ジョギングを始めた頃にはここを通る度に涙が出てきてろくに走れなかった
でも、やっと最近、目が潤む程度ですむようになった

並木道を通り過ぎると、圭ちゃんとよく一緒に散歩をしたりお弁当を食べた公園に
公園のあとは、私たちが通った大学の裏門に。
その後は私の住むアパート
駅まで徒歩20分、家賃は月、4万2千円。2階建ての1DKの微妙にぼろいアパート
すごい機能がついてるわけでもなし、家賃が安いわけでもないし、
部屋は微妙に狭いし、何よりも駅からも何気、遠い。

でも私はこの家に住んでいなければいけない
圭ちゃんが、帰ってきたときに私がどこか、別の所へ引越していたら彼はきっと困る
彼が帰ってくるまでこの家に居て、貯金をしておく
帰ってきたら一緒に新しく住む家を買うの。
希望としては、日当たりが良い平屋建て。庭ではアジサイやヒマワリを育てたい
春の暖かい日には縁側に出てひなたぼっこ。
夏の夜には花火をして、秋には月を眺めて、冬はそこで雪だるまをつくったり。

犬か猫も飼いたい。
小さな柴犬とか可愛いよなぁ、猫なら雑種で構わない
彼も動物や植物が大好きだったから喜んでくれるだろう。
小鳥もいいなぁ、文鳥とか。ウサギも飼ってみたい

並木道を通る度に泣いていた。
圭ちゃんと手を繋ぎながらいろんなおしゃべりをした、この道。
でも、最近は泣かなくなってきた。
圭ちゃんが居ない、日常がどんどん当たり前になっていく
圭ちゃん専用だったマグカップにホコリがかぶってる
圭ちゃんに返すのを忘れてたCDは磨り減るほど聞いた
それほど好きな曲じゃないけど、この曲を聴いてると
圭ちゃんとの思い出が甦る
映画に行ったり、一緒にご飯を作って食べたり、図書館に行ったり、
カフェでお茶をしたり、うたたねをしたり。
そんな日常がどんどん消えていく。
忘れてしまうのだろうか?このまま。
いや、私は忘れない。
たとえ、彼が帰ってきても、来なくても。

彼は今も世界のどこかで、青いギターを掻き鳴らして歌っているのだろう。
優しい、恋の歌を。どこかで誰かに伝えているのだ。

圭ちゃんがいつも歌っていたあの曲はなんていうのだろう?

今は、誰が圭ちゃんの歌を聞いてるのだろう?

耳を澄ませば、圭ちゃんの歌声が聞こえてくる。

優しく、彼の歌声は私の世界を廻り続ける。



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