スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説SUGINAMI MELODY>02

SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 2

出せないまま、同じ内容ばっかりの手紙がたまっている
出す相手は、いつも決まっている
圭ちゃん。
今どこにいるんだろう?
もう、私いつまで待ってればいいんだろう
それとも、私のことなんて忘れちゃったのかな。
もう、諦めたほうがいいのかな。

圭ちゃん。
会いたいよ、寂しいよ。どこに居るの?
早く、帰って来てよ、嘘つき。
すぐ帰ってくるって言ってたのに。

圭ちゃんはいつも歌っていた
あの、青いギターで
いつも私が知らないような英語の曲ばっかり歌っていた
歌詩の意味はまったく分からないし、誰の曲かも知らない
でも、あの圭ちゃんの歌は、私の中にすんなりと入っていった

圭ちゃんはいつも悲しげな目をしていた
そしてその目で私にいつも微笑みかけてくれた
「そんな笑い方しないで、もっと心から笑ってよ。」
私がそう言っても圭ちゃんは
「笑い方に正しいも間違いも無いよ、」
と、フッと目を細めて笑って私に言う。
そりゃあ、確かにそうだけど・・・と私が戸惑う
でも、私がどんなに言っても圭ちゃんの笑い方は直らなかった

体を重ねた夜は圭ちゃんは、私をその後もずっと抱きしめて朝まで眠った
少し、窮屈だったけど私の家にあったベッドには丁度良い大きさだった

圭ちゃんから私はいろいろな事を学んだ
美味しいスープの作り方や、台所掃除のコツや、上手な洗濯物の干し方
パソコンの操作のしかた、野良猫と仲良くなれる秘訣に、
竹とんぼの上手な飛ばし方に、折り紙まで。
他にもいろいろな事を教えてもらった、圭ちゃんから学んだ知恵は今でも使っている

寒い夜は、圭ちゃんから教えてもらったスープを作って体を温める
大掃除の日は、圭ちゃんから教えてもらったやりかたで台所を磨く
洗濯物がたまった日曜日は、圭ちゃんから教えてもらった方法で洗濯物を干す
パソコンの調子が悪いときも、圭ちゃんの言っていた通りにする
野良猫を見かけたら、圭ちゃんが言っていたように猫を呼んでみる
ヒマな休日は近所の公園で竹とんぼを飛ばしてみる
風が気持ちいい夕方には、折り紙で風ぐるまをつくって、回す

私の生活の全てに圭ちゃんが含まれている
スープを飲んでは、台所を磨いては、洗濯をしては、パソコンを直しては、
野良猫とじゃれあっては、竹とんぼを飛ばしては、風ぐるまを作っては。
圭ちゃんを思い出し、一人で泣く

迷惑な女でしょ。『重い』でしょ。
でも、止まらないの。涙が。
圭ちゃんと過ごした4年と少しの間が甦ってくるの。
会いたい、だなんて幻想を抱いて私は家で、公園で、外で、ベランダで、泣く。



↓目次

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】【14】【15】【16】【17】【18】【19】【20】
【21】【22】【23】【24】【25】【26】【27】