スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 7

朝のジョギングが終わると私はシャワーを軽く浴びて汗を流し
服を着替えて、駅へ向かう

駅までの道は結構好き。
風が気持ちよくって、並木道の木々がなんとも言えない

朝の満員電車に乗って、髪のセットが崩れる
これ、毎朝大変なのよ。どうしてくれるの?

やり場の無い怒りは、安っぽい紙コップのコーヒーにぶつける

120円分の美味しさとあたたかさで私を慰めてくれる。

職場に着いたら周りの人にあいさつをして、適当にデスクに置かれた仕事をこなす
来館されている方の質問に答えたり、
汚れた本をキレイに拭いたり、疲れがたまる一方だ

「伊藤さん、今日、飲みません?」
そう声をかけるのは高橋さん。男の人で未婚の29歳。
ガッチリした体を見ても何も私はときめかず
「圭ちゃんとは違うタイプだよな、」なんて思う
結局、私のものごとの決め手は圭ちゃんなのだ。
「すいません、今日は用事あるんで。」と私は得意の笑顔でかわす


司書なんて、楽じゃない。
一日中、図書館のカウンターで立って話していると脚や腰が痛い。
私ももう若くないのかな、まだ20代なんだけど。一応。

電車に乗って、駅に降りて買い物を済ませ、あの並木道をくぐる

はぁ、今日も1日疲れた。
明日はもっと疲れるだろう。

左手に持ったスーパーの袋が重たい
たぶんこの重さは牛乳と、ミネラルウォーターだろう、
買わなきゃ良かったな、2日に分けて買えば良かった。

秋の風が私の頬を冷たく冷やして通り過ぎる
すっかりもう秋だ。
私のアパートの近くの公園には葉が色づき始めた
楓、銀杏、ブナ、 赤に、黄色に茶色に染まりゆくのを見ると切なくなる

ひゅうっと風が吹く、上着を着ていても肌寒い
そういえば、あのトレンチコートのホームレスは大丈夫だろうか?
あんな、薄そうなコート一枚じゃ寒いだろうな。
どこで寝泊りしているんだろう。

まだ居るかな、と遠くのベンチを見る。私は視力がいい。
あっ、居る。
ベンチに男の人の人影が見える
あの人かどうかはまだ決まったわけでは無いけど
たぶんそうだろう。
私は何も無かったかのようにして横でチラ見しながらゆっくり通る
歩くペースは少しだけさげる、不自然じゃないように。

見てみるとその人は膝に野良猫を乗せていた
あっあの猫知ってる。私がいくら圭ちゃんが言ってたように呼んでも
来てくれないし、なかなかなついてくれないの

そんな気難しい猫をあの人は膝に乗せていた
猫はおとなしく、喉をごろごろと鳴らしながら寝ているように見えた
その猫を男の人は優しい手つきで頭や背中を撫でる
猫も男の人を安心しきっているようで、時々パッと起きてあくびをしてまた寝ていた



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