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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 23

圭ちゃんは見当たらなかった、私はしょうがないから家へ一旦帰って適当に昼ごはんを食べた
食欲は無かった
でも圭ちゃんのつくった、スープが無性に飲みたかった

朝、家を出る前に居たベランダには風ぐるまが置いたままだった
このまま捨てるのももったいない、なぜか寂しいな、と思ってベランダの手すりに針金で固定してみた
そうしたら風が吹くたびにカラカラと回って、懐かしい気持ちにさせる

睡魔が襲ってきた
お腹がいっぱいだったからかな?と考えていたらベッドの上で眠っていた
寝ている間、ずうっと耳にカラカラ、カラカラ、と風ぐるまの音がしていた

カラカラ カラカラ
スーツを着た圭ちゃんが立っている、私ににっこりと微笑む
言葉は何も無い、でもなんだか伝わってくる
私も嬉しくなってにっこりと笑う

圭ちゃんは手を後ろにやってもぞもぞさせながら私に何かを手渡す
なんだろう、何をくれるんだろう?
私は手を伸ばすと圭ちゃんはキラキラと金色に光る風ぐるまを渡す

何も声にはしないけれど、なんだか何が言いたいのか分かる
「これ、あげる」
私は心の中でありがとう、と声が枯れるほど言う
カラカラ カラカラ
風は無いけれど音は聞こえる 風ぐるまの音がする

圭ちゃんは私の左手をちょんちょん、と触ってくる
「なあに?」声にはしないけれど私は圭ちゃんに聞く
「手、広げてみて」そう言っている気がしたから私は手を広げてみる
圭ちゃんがキレイに輝く指輪を薬指にはめる

これって、まさか結婚指輪?
私がそう言おうとした瞬間、圭ちゃんは私を抱きしめる
そうして言葉にする「さなみ、愛してるよ」
私は声が出ない、でも嬉しくて嬉しくて涙が溢れて来る

私も圭ちゃんをギュッと抱きしめる「ありがとう」「私も愛してる」「嬉しい」「会いたかった」
どれも全て当てはまるのだが、どれもみんな少し違う
言葉では言い尽くせない、だから私も抱きしめる

カラカラ カラカラ  風ぐるまの音がする
カラカラ カラカラ  もうちょっと、夢を見させて
カラカラ カラカラ  カラカラ カラカラ

眼が覚めた、時計、時間、今、何時?
外が紅く染まっている、夕方・・・

ぼうっとしたまま洗面台に立つ、寝ぐせはついてない。
服もシワになってない。

・・・・・圭ちゃん。
時計を見ると5時を回っていた。圭ちゃんが、行っちゃう。

嫌な予感がして私は、ケータイをポケットに突っ込んで、
部屋の鍵もかけずに飛び出していた

圭ちゃんが、行ってしまう。そんな気がした



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