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小さな街の中で [作者:たぬき]

■第3話 [2/2]

「ただ〜いま〜。ハラ減った〜!」
「おかえり〜」
「あれ?早いね」
真生はちょっと驚く。いつもは瞳は帰っていないので、誰の返事も返って
こないからだ。
「仕事が早く終わったからね。ご飯できてるよ」
「やったー!!!食べる!!!」
真生は顔がほころぶ。しかし、瞬時にその表情が一転、暗くなった。
「どしたん?」
「いや、家庭訪問。水曜と木曜と金曜のどれか。ああ、ヤだなぁ」
「じゃあ金曜日の最後のほうの時間で…っていうかプリントは?」
「え?ああ、…。」
真生はすぐさまカバンの中をあさる。が、
「無くした…。」
「おいおい。別にいいけどね。ちなみに担任の名前は?」
「ああ、…。」
真生は今度は頭の中をさぐる。が、
「忘れた…。」
「ちょっと…真生ちゃん?」


そのころ、アパートの104号室では…
「くしゅんっっ!」
ちょうど真生に名前を忘れられた担任、佐々岡優一がくしゃみをしていた。
小太郎くんはゲージの中を走り回っている。
それまで、クラス名簿を眺めていた優一の目は、『水谷真生』のところで
とまっていた。
「まさかな…ありえないよな…『水谷』さん。しかしなぁ…」
ぶつぶつと独り言。そして、
「やっぱり似てるよなぁ…」
ふと、写真立ての写真を見てつぶやく。
そこには、若き日の優一と、『水谷』さんの笑顔が写っていた。

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