小さな街の中で [作者:たぬき]
■第2話 [2/3]
スーツ姿の背の高い――アパートの104号室の男が、『小太郎』君の飼い主が教室に入ってきた。
もちろん、そんなこと真生は知らないが。
シーンとした教室に、歩く音だけが鳴り響いて、止まる。
「えー、皆さん、はじめまして。こんにちは」
小さな声で、
「やっぱりカッコイイ…」
美里はつぶやく。言ったのは美里だけで、他の女子生徒は心の中で思っていた。
(ふぅん…)
真生だけは無関心だった。
「えっと、このクラスの担任になった、佐々岡優一です。数学担当で、バドミントン部の副顧問です。よろしく」
(げっ)
真生は少し焦った。真生はバドミントン部だった。
(やった♪)
美里は心の中で喜んだ。美里もバドミントン部だった。
「先生、年は?!結婚は?!彼女は?!」
男子生徒が聞く。周りの生徒が笑う。
「37歳。結婚してなけりゃ彼女もいませんよ」
苦笑いしながら優一は答えた。
「先生のことはいいから、皆、一人ずつ自己紹介してもらいます!」
お決まりのように、生徒の「え〜!?」という反応。かまわず優一は
「名前と部活、好きなもの嫌いなものと抱負を言ってね〜。それでは窓際の席から順番にどーぞ。」
ちなみにだが、すでに真生は寝ていた。
・
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「ちょっと君!もうすぐ自己紹介だよ」
後ろの席の子がペンで真生をつつく。
「あ。どーも」
寝ぼけ眼でその子に礼を言った。
「次は、え〜水谷さん。どーぞ。」
「はい。名前は水谷真生、バドミントン部です。好きなものは…そうですねぇ。昼寝です。嫌いなものはピーマン。
抱負は…部活を頑張ります。2年間どーぞヨロシク」
無表情で淡々と喋って終わった。そしてまた寝る。
↓目次
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