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小さな街の中で [作者:たぬき]

■第10話 [1/2]

部屋に、沈黙が流れる。
真生はイスに座って考え込んでいた。
優一は向かい側のイスで、
「………」
沈黙をどうにかしたくて、頭の中で話題を探しているため、視点が定まっていない。

「先生」
沈黙を破ったのは、真生だった。
「え?な、なに?」
重い雰囲気で話かけられたので、優一は少し動揺している。
「先生は、お母さんの幼馴染、なんですよね」
「え?あ、そうだよ」
時計の秒針の音が、やたらと大きく聞こえる。
網戸だけ閉めている窓から、涼しい風と、鈴虫の声が入り込む。
「先生は、私のお父さんのこと、知ってますよね?」
背中に汗が流れるのを、優一は感じた。
そして、優一と真生目と目は合っているが、真生は自分じゃないものを見ているような気がした。
「…知ってるよ」
口が、顎が妙に重い。でも、なぜか声を出したくてしかたがない。
「斎藤、孝太。あいつも、幼馴染だから。むしろ、瞳――お前の母さんよりも、長い。長かった、かな」
「そう、ですか。そうだったんですか」
「小3で瞳が引っ越してきて、それから高校卒業まで、ずっと一緒だった」
優一は、ふと時計に目をやった。まだ20分も経っていなかった。
「先生は、どこまで知ってるんですか?」
「何を?」
「お母さんのこと、です」
優一は、少し考えた。そして、
「どこまで知ってると思う?」
質問で返す。
「お前が聞きたいなら、すべてを話すよ?」

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