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小さな街の中で [作者:たぬき]

■第6話 [1/4]

「なんか…いつも以上に機嫌、悪いな」

月曜日、学校で浩樹は恐る恐る真生に話しかけた。
家庭訪問以来、ずっと真生は機嫌が悪い。

「なに?なんか文句あんの?関係ないでしょ」
「い、いやいや、怒ってるのは人の勝手だと、思うけど…」
「……」
真生が睨みつけてくるので、浩樹はたじたじだ。

「えっと…怒りの矛先を、その関係ない人間に向けないでほしい。っていうか、
  君は愛想笑いと言うものが出来ないのか!」

「…残念ながら、出来ませんね。そんなに器用な性格じゃないもので」

「それは…、残念な性格ですね」

結局はいつも通り話している二人。はたから見たら、ただの仲良しである。
しかし、この二人の場合、「はたから見ている人間」は黙っちゃいない。

「ちょっと良いかしら、水谷さん…?」

二人の会話は強制的に閉ざされる。
真生は折角気分が良くなってきたときに邪魔されて、話しかけてきた女子を睨んだ。

そこにいたのは、ツインテールの少女。ついこの間も、浩樹と話す真生を睨んでいたヤツで、
その大きな目は、いかにも『クラスに一人はいる、嫌なヤツ』という感じにつりあがっている。
真生は慣れたと言いつつも、本当は大嫌いで、もう関わりたくない女である。

「なにかしら、咲さん?」
真生はさも忌々しそうに答えた。その女、工藤咲は偉そうに腕を組んで真生の隣で仁王立ちしている。
「ちょっと来てくれないかな?話があるんだ」
咲の口調は穏やかで、口元は笑っているが目は笑っていなかった。
(…浩樹がいるからか。チッ)
口には出さずに真生は思った。
そして、しぶしぶ咲の後をついて行った。
状況を把握しきれていない浩樹は、しばらくポカンとしていた。

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