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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第2話 ノラ・ロイ(6/7)

「あぁ、半分だけな。でも、あいつはケルー人の血を濃く受け継いでいるから・・・・・・」

「ディーンみたいに武器にならなくても少しだけなら水を操れる。
正真正銘のガダネス人なら崇められる存在だが、混血になるとガダネス人やアトラ人、ケルー人にも疎まれる存在だ。
昔ほどひどくはないが、異端児と言われて石を投げられるのはまっぴらだね」

 アリィとディーンの後ろに仁王立ちでノラが言った。話を割り込まれたディーンはノラを睨んだ。

「やっぱり、悲しいよね」

 アリィはぽつりと呟いた。ノラとディーンは驚いた目つきでアリィを見た。アリィは首をかしげた。

「え・・・・・・悲しいよ。混血じゃなかったら神様になるのに、混血だったらいじめられるでしょ。
私、そんな友達がいたの。その友達は炎を少し操れていたけど、『寄生児』とか『異端児』とか言われて大人や子供にもいじめられていたの。
私、すごく悲しかった。アトラ人とケルー人は結婚してもいいのに、なんでガダネス人と結婚したらダメなんだろうって。
元は同じ人間なんでしょ?ガダネス人も私達と同じ肌の色をしていたんでしょ?」

 ディーンはしばらく黙っていた。そして、すっかり暗くなった空を見上げて言った。

「それは、俺も思っている。俺だっていつかは死ぬんだ。だから人間なんだ。
なのに、どうして人間として認めてもらえないのかと、いつも思っている」

 ノラはディーンを見下ろし、頭を鷲づかみにして、持ち上げた。

「ふんっ、周りから崇められてるから、そう言えんだよ」

「かもな。でも、アカートの国を出たらまた変わるかもしれない。俺はそう思ってタビビトと旅をしているんだ」

 ディーンは抵抗せず、ノラの目をじっと見つめて言った。その光景はアリィとクレイにとっては奇妙に見えた。
なぜなら、ディーンはノラに頭を鷲づかみにされて、持ち上げられているので足がだらんとぶらぶらしていたからだ・・・・・・。
ノラは何か言おうとしたが、タビビトに呼ばれ、手を放した。
  その日の夕食は、クレイがアリィに昔話を聞かせ、ディーンとノラはお互い目を合わせず、何も喋らず黙々と食べていた。
タビビトはそんな二人をほほえましく見ていた。


↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】