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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第1話 アリィ・ローグマン(3/7)

  旅人はズボンのベルトに挟んである、大きめの扇子を取り出して広げると、あおぎはじめた。
  少年は男の腕にそっと立った。旅人は扇子をあおぐのをやめた。

「この色は生まれつきだよ。そういうお前は人間らしくないな」

「クレイとディーンがいるからさ」

  旅人はにっと笑い扇子をしまうと、激しい戦に背を向け、歩き始めた。

「パパ、ママ・・・・・・動かないの?」

  冷たくなった両親の身体を揺さぶって声を掛ける少女がいた。
  少女の両親はいわれの無い罪を着せられ、街中の人々に罵声を浴びながら処刑されたのだった。
  アカートの国では一般市民の中でも、魔法派と科学派に分かれていがみ合っていた。
  魔法派の市民は地・火・風・水を元にした魔法を使い、自然を愛していた。
  科学派の市民は学力に長け、優れた技術を作り上げていた。どちらかというと、魔法派の市民は貧しい者が多かった。
  なぜなら、科学派が合金や、火薬など、どんどん新しいものを生み出すのに関わらず、
  魔法派は言い伝えを頑なに守り、平凡に暮らしていたからだ。少女の両親もまた魔法派だった。
  少女の住んでいる町に科学派の権力者がやってきて、魔法派をどんどん片っ端から処刑していった。
  少女の両親は魔法派の仲間に慕われていたので早速、目の敵にされていた。
  そして、とうとう科学派の権力者の罠によって処刑されてしまった。
  少女の親を罵倒していたのは科学派の市民で、魔法派の市民は家にこもり、恐怖に怯えていた。次は自分じゃないかと・・・。
  少女は溢れてくる涙を拭いながら、両親の身体を揺さぶりつづけた。両親の身体は壊れた人形みたいだった。
  母親の手首には紐できつく縛られた痕があり、左胸には銀色の矢が刺さっていた。
  父親の身体はほぼ、原型がなく黒焦げだった。少女は母親の胸に刺さっている矢を力を込めて抜いた。
  すると胸から湧き水のように血が溢れ出した。少女は溢れてくる血を押さえ思わず叫んだ。

「ママー!!」

  少女の叫び声を聞きつけた兵士がやってきた。
  兵士は銀色の鎧を着て、青いマントを羽織っていて、科学派の象徴と見られる合金で出来た指輪をはめていた。
  兵士は少女の肩をぽんぽんと優しく叩いた。少女はびくっと跳ね上がる。


↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】