唄う旅人 [作者:水月侑子]
■第1話 アリィ・ローグマン(7/7)
「ディーン、この少女をなぜ連れてきた?」
旅人は鍋になっているクレイをつついているディーンに聞いた。すると、ディーンの頬に少し赤みが差した。
「うっ、うるせーな。」
「その前に、俺にどうしろというんだ。まさか、連れて行くんじゃないよな?」
旅人はディーンの服を掴み、ひょいと持ち上げた。エメラルドグリーンの肌はますます赤色に染まっていった。
「い、いや、あいつ殺されかけてたから、助けたんだよ。聞いたところ、両親は殺されたみてえだし・・・・・・」
ディーンはじっと旅人を見つめた。旅人は大きく息を吐くと言った。
「助けた・・・・・・ね。普段は慈悲の気持ちすらないディーンが人助けか」
旅人はディーンを放した。ディーンは涙目で旅人の足に蹴りを入れた。
「君、アリィだっけ?」
そわそわとしているアリィに声を掛ける旅人、アリィはうなずいた。
「子供ひとりで生活するには大変な時代だ。辛い旅に耐えられるなら、連れて行ってやってもいい。俺らと一緒に行くか?」
アリィはしばらく下を向いて考え込んだ。そして、旅人を真っ直ぐ見据え、うなずいた。
「よし、これでいいんだろ?ディーン」
ディーンはふてくされたような、照れたような表情でうなずいた。
「アリィ、俺の名前はタビビト。で、緑の肌をした奴はディーン」
アリィはディーンに視線を移した。ディーンは一瞬だけ目をあわしたが、すぐそっぽ向いてしまった。
「わしはクレイじゃ」
クレイは水をぶくぶくさせながら言った。アリィは喋る鍋に目を丸くした。
↓目次
第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
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