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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第2話 ノラ・ロイ(1/7)

眠っている野良猫の頭を撫でる。朝の日差しは何でこんなにも疲れた心を癒してくれるのだろう・・・・・・。
タビビトは首に掛けている藍色の入れ物をぎゅっと握り締めた。
「タビビト、朝飯できたぞ!」
  冷たい風と共にディーンが現れた。タビビトはああ、とうなずいた。野良猫は片目をあけて、視線を追いかける。
そして、ゆっくり起き上がると大きく伸びをして、甘えるように喉を鳴らしタビビトの足に頭をすりつける、ディーンはそれをいぶしげな表情で見ていた。

「そろそろ行こうか」

 タビビトはすたすたと歩き始めた。野良猫は上目遣いでタビビトを見つめ、名残惜しそうな声で鳴いていた。
ディーンは野良猫に向かってあっかんべーをした。

「タビビトさん、クレイがパンを焼いてくれたよ。」

 アリィは笑顔でタビビトの元に駆け寄る。タビビトはにっこり笑いアリィからパンを受け取る。
ディーンはタビビトの後ろにいた。アリィはディーンにパンを差し出し笑いかけた。
ディーンはアリィからパンをひったくると、頬を赤くしてそっぽ向いてしまった。

「じゃあ、頂こうか」

 タビビトとディーンとアリィはそばにあった大きな石に座り、焼きたてのパンと、ディーンがどこからか盗んできた肉を焼いて食べた。
  アリィがタビビトと旅を始めて五日たった。アリィは長距離の旅に慣れないせいか、靴ずれを起こしてしまい、足を引きずって歩いていた。
それを見かねたディーンは、アリィを抱きかかえて歩いていた。二人の身長は一緒ぐらいなので、はたから見れば不自然だ。
タビビトはやれやれという表情で、アリィを肩車して歩くことになった。
アリィは内心、申し訳ないと思っていたが、タビビトは嫌がってなかったようなのでホッとした。
ただ、ディーンは気のせいか、機嫌を損ねている気がした。

「ねぇ、タビビトさんはどこまで旅をするの?」

 アリィはずっと気になることを聞いてみた。タビビトはにっと笑い。


↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】