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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第1話 アリィ・ローグマン(2/7)

魔法使いが放った火の玉がドーンと音を立て、多数の兵士の元に落ちる。
兵士は慌てて逃げ出そうとするが、間に合わない者が多く、火の海の中をもがくことになってしまった。

  毎日のように戦が起こるアカートの国では魔法使いが優勢だと思われていた。
  が、最近、ハイディという優秀な科学者が現れ、彼の発明した火薬、ウラキーノで沢山の魔法使いを倒すことができたのだ。
  彼の発明した火薬は煙に触れたものでさえ、皮膚がただれ、最悪の場合、骨が解けてしまうほど恐ろしい火薬だった。
  そう、直撃すれば跡形すら残らない、誰も発明したことのない恐ろしい火薬だった。
  その時、激しい戦を遠目で眺める旅人がいた。

「なあ、この戦いどう思う?」

  旅人は茶色の粘土を片手に問い掛けた。すると、粘土はくねくねと動き始め、埴輪のような形になり、丸い口を上下に動かした。

「意味がないと思うけどのぅ・・・・・・」

  埴輪になった粘土の声は、年老いた老人のようにしわがれていた。

「俺も意味がないと思う。魔法と科学はお互い良いところはあるんだけどなぁ」

  すると、どこからか全身がエメラルドグリーン色の肌をした六歳ぐらいの少年が現れた。
  少年の頭には幅、5センチぐらいの銀色の輪がはめられていた。

「人間って本当に馬鹿だよな。同じことばっか繰り返して、だいたい神なんてもんはいねーの」

  少年はふてくされた表情で言った。すると粘土は、

「そういうお主は風神の子供じゃないか」

「風神なんてどっかの誰かさんが勝手に付けた名前だよ。ちょっと風が操れて長命なだけで神って呼ぶんだぜ。俺らにとっちゃ普通だけど」

  少年は手をかざし、周りに風を巻き起こした。普通に考えればありえない風景だが、旅人と粘土はなれている様子だった。
  少年は見えない風に乗って宙に浮いた。

「そうはいかないだろう。人間は自分達にないものを崇拝したり、嫌がったりする生き物なんだから。お前の場合は全身がエメラルドグリーンだからな」

 



↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】