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唄う旅人 [作者:水月侑子] ■第2話 ノラ・ロイ(2/7) 「でも、アカートの国から出たことないんだろ?」 すかさずディーンが言う。タビビトは苦笑いをしながらあぁ、と答えた。 「アカートの国は広いからな・・・。もうすぐアカートは終わる。」 タビビトの表情はどこか寂しそうだった。故郷をなつかしむような哀愁の漂う目・・・。アリィにはそう感じた。 「一体、どこに行けば争いのない場所へ行けるのじゃろうか・・・・・・」 「さぁ、科学と魔法が唯一、融合している国、ラウト・・・・・・」 とタビビト。 「ラウトって遠いんだろ?」 ディーンは身を乗り出して聞いた。 「あぁ、遥か彼方にある国だって聞いたことがあるのう。そこの人たちは皆、髪と目の色が黒いそうじゃ」 クレイはしわがれた声で言った。 「お前みたいだな」 とディーン。タビビトはただ、穏やかに笑っていた。 この草原に唄う旅人がいる。そのわずかな情報を頼りにタビビトを探す男がいた。彼の名はノラ。ぶかぶかのグレーの帽子に擦り切れた茶色の服を着ている。腰にはサーベルをはさみ、靴は先が鋭く、目の前にあるもの全てを突き刺しそうなくらい尖っている。 「タビビト・・・お前は一体、どこにいるってんだよっ!!」 ノラはどこまでも続くように見える草原で思いっきり吠えた。 「今日はここまでだ。この草原は広いからな・・・・・・」
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