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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第2話 ノラ・ロイ(3/7)

 空が茜色に染まった頃、旅人は腰をおろして、火を起こした。その最中、ディーンは慣れた手つきで皮のテントを組み立てる。
アリィは今朝、料理に使った肉の残りをまな板になったクレイの上にのせて切っていた。
  肌がスッと冷えるような冷たい風が吹いていた。妙に冷たい風がアリィの鼻の中に入り、思わずくしゃみをした。
ディーンはどこかそわそわした様子だった。

「なあ、タビビト」

 とディーン。

「ん?どうした?」

「この気配・・・・・・」

「あぁ」

 タビビトは火を起こしつづけた。

「なあ、大丈夫かよ・・・・・・」

 ディーンは不安げな声を出す。

「大丈夫。」

 タビビトは立ち上がってそう言うと、腰から扇子を勢いよく抜くと、扇子を真上から思い切り叩きつけるようにして降ろした。
  ゴンっと鈍い音と共に一人の男が姿を現した。突然の出来事にアリィはナイフを両手でしっかりと握って立ち尽くしていた。

「ノラ、お前の奇襲方法なんかお見通しだ」

 タビビトはにやりと笑った。ノラは不服そうに旅人を睨んだ。

「なんだと・・・・・・勝手に姿を消しやがって!!」

 ノラはサーベルを抜くとタビビトに向かって斬りかかった。
タビビトは手を後ろに組んで、ノラの突進をヒョイとかわした。突進をかわされたノラはふらつきながら足を止めた。

「俺の攻撃もお見通しって訳か。なめるんじゃねぇ!!」


↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】