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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第1話 アリィ・ローグマン(4/7)

「ここは子供が来たら駄目だよ」

「うっ・・・・・・パパとママが・・・・・・」

「君はこの人たちの子供かい?」

  兵士は優しい口調で話す。少女は素直にうなずく。兵士は少女の頭を撫で、そっと抱きかかえて持ち上げた。

「おじさんがいい所、連れて行ってあげる」

「いい所?」

  少女は声がつまりそうになりながらも尋ねた。

「そう、パパとママに会えるところ。早く元気なパパとママに会いたいだろう?」

  兵士は優しく笑う。少女は力強くうなずいた。

「本当に?」

「本当だよ」

  兵士は処刑場へ続く扉を開け、外に出た。処刑場には大きな木の台が中央に置かれていた。
  木の台には細長い棒が四本立っていた。棒の所々に血が染み付いている部分があった。
  兵士は木の台まで行き、少女にそこを座らせると、優しく話し掛けた。

「もうすぐ、パパとママに会えるからここで待っててくれる?」

「うん」

  兵士は少女に背を向けると、二メートル離れた。そして、青いマントから小さなボウガンを取り出した。
  少女は何が起こっているのか分からなかった。兵士はけたましく笑いながら弓を引いた。

「そこでじっとしていようね。今からパパとママのいる地獄へ堕としてあげようじゃないか!」

  少女はその時、恐怖心を感じた。心臓の鼓動がだんだんと速くなる。誰か、誰か助けて・・・私、殺される!!
  ヒュンッという音と共に少女は目をつむった。
  もう、駄目。と思ったときだった。少女は身体が急に軽くなるのを感じた。まるで風に包まれているようで心地よかった。
  少女は恐る恐る目を開けた。
  少女の目に映ったのはエメラルドグリーンの肌をした、少女と同じぐらいの少年だった。
  少年はむすっとした表情で少女を抱きかかえ、見下ろしている。状況が飲み込めていない少女は目を大きく開いて少年を見つめていた。


↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】