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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第1話 アリィ・ローグマン(1/7)

  ずっとずっと昔、人々が魔法使いだった世の中、新天地を求め海を渡って大陸を探す者が沢山現れた。
  そして、魔法使いの中から、新しいものを次々、発明したり、物の構成を深く追い求める科学者と呼ばれる者が現れた。
  それは、当時の世の中では歓迎される存在ではなかった。
  なぜなら、魔法使い達が『自然を愛せよ。我らは自然に身を委ねる。
  全ては自然のなすままに。』という昔の言い伝えを頑なに守りつづけ、人工的に作られたものを伝統に反するという理由で、
  『不純』もしくは『野蛮』と言っていた。科学者達はそれに対して異議を唱えた。
  人間は皆、便利な生活を求めて何かを創造しているから言い伝えは矛盾していると・・・。

  魔法使いと科学者がいがみ合い、毎日のように戦がおこった。
  激しい戦の中で名も無き市民達が犠牲になっていった。そんな時代の中、一人の旅人がいた。
  彼の名は誰も知らない。彼をよく知っている人でさえも・・・。
  右目を覆い隠すように伸びた漆黒の髪、夢に満ち溢れた強くて真っ黒な瞳、
  すらりと伸びた細長い身体、首には藍色の小さな入れ物、腰には鶴の彫刻が施された漆塗りの扇子が挟まれていた。

  そして、彼はとても変わったものを引き連れていた。土の精が集まり、実体化した粘土のクレイ。
  風を自由自在に操れる、エメラルドグリーンの肌をした少年、ディーン。
  旅人は音楽が好きだった。クレイを笛にしては美しい音色を奏でていた。
  時には透きとおったガラスのような綺麗な声で歌も歌った。人々は彼の音楽に感動し魅虜されていた。
  そんな彼を人々は『唄う旅人』と呼んでいた。
  彼は今日もどこかで何かを思い、旅を続けているのであろう。



↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】