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唄う旅人  [作者:水月侑子]

■第2話 ノラ・ロイ(7/7)

 夜が明けると、タビビトはクレイと共にテントの外に出た。クレイを笛に変えて音色を奏でる。
ノラは笛の音に目がさめ、テントの外に出た。タビビトは笛を吹くのをやめ、唄い始めた。
  タビビトの歌声は高くて、美しい。けれど、どこか切なさと強さを持っていた。
ノラは我を忘れて、タビビトの歌声に聞き惚れていた。ノラに続いてアリィとディーンがテントの外に出た。
アリィは初めて聞くタビビトの歌声に鳥肌が立った。こんなに美しい声で唄う人がいるのかと・・・・・・。
  タビビトは唄い終わると、後ろを振り向いた。三人は同時に我に帰って顔を赤くした。

「俺、久しぶりに歌ったからなぁ」

 タビビトは照れくさそうな表情で首を掻いていた。

「す・・・・・・すごいです。私、今までこんなに綺麗な歌に出会ったことがありません。」

 アリィはやや興奮気味だった。

「相変わらずだよ」

 ディーンはそっぽ向いて言った。

「お前・・・・・・だから『唄う旅人』って言われてるんだな」

 ノラは納得した表情だった。すると、アリィはさらに興奮した様子でタビビトに詰め寄った。

「えっ、『唄う旅人』ってタビビトさんのことだったんですか。
私、パパとママからタビビトさんの話を聞いていました。すごく歌が上手で、タビビトさんの歌を聞いた人はもう、虜になるって。
あと、ピラピラしたものが武器ですごく強いってことも」

「ピラピラしたものが武器・・・・・・ね」

 タビビトはマントにすがるアリィの頭を撫でながら、苦笑いした。


↓目次

第1話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第2話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】
第3話 【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】