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スパイダー2 [作者:あつこ]

■13

君の本当の気持ちをこっそり教えてもらって、
それを聞いてにんまり笑う。
君の心に糸を張って、ひっそり暮らす計画を立てる、僕はスパイダー。

あの残った2分で、僕らは何をしたかって言うと
まさか愛なんて育んでない、ただ、今井さんの話を僕がうなずきながら聞いてただけ。
彼女の話ってのもみんなが思い描くような甘酸っぱいのじゃなくって、
ただ、ちょっとした担任のグチとか テストの内容とか。そんなもの。

2分が過ぎれば、僕らはただの『同じ学年の子』になってしまうから。
僕にとって見れば、「友達」として認められてる様なこの2分は結構、貴重。
「あっ、もうチャイム鳴るよ」
「じゃぁ、僕先に出るね。ばいばい」
「うん、また明日・・・」
(また、明日。)と言うさりげない彼女の響きに僕は一喜一憂して、
明日も会える、という資格をもらえたような気がした。
先に、音楽室を出たら再び中からピアノの音がした
これは、、、さっきの曲だよな?題名は・・・
『Je Te Veux』
優しい響きが僕の中に入っていって、僕の心を飲み込んだ。

「峻ー早く帰ろー」放課後になって、遼が僕にそう言った。
『エリック・サティのJe Te Veuxって言うの。。。』今井さんのあの言葉が忘れられない
僕は、親友の誘いなど蹴って「悪い、ちょっと用事あるから、先帰ってて良いよ」
と言って、僕は図書室へ行った。
物語じゃなくって、歴史じゃない、ミステリーでもない。僕は、『音楽』へ駆けてった。
ベートーヴェンにモーツアルト、ショパンも、どうでもいい。
僕が知りたいのはただ一人。
≪エリック・サティ≫・・・
目次を見て、そのページを僕は大急ぎで開けた。

1986年5月17日〜1925年7月1日
フランスの作曲家で、音楽界の異端児、変人と称されている
西洋音楽の伝統に大きな影響を与えたとされていて・・・

長ったらしい説明は僕にとっては苦痛としか言いようが無かった。
作曲技法やら、主義とか平行和音とか、そんなものを調べに来たんじゃなかった。
頭がパンクしそうになったとたん、僕は見つけた。
『現在でもよく弾かれている≪Je Te Veux≫は、日本語訳で
「あなたが好き」「あなたが欲しい」・・・』
それから、先もいろんな説明がいっぱいあった
だが、そんな事よりも僕はにはもっと重要なコトがあったのは事実だ。
その本を持って、僕が図書室に一人、立ちつくしていた
図書委員は居ない。
サボってるんだろう、いや、そっちの方が都合が良い。
本を閉じて、元の場所へ返すと、ある音楽が僕の耳に入った
ピアノの音・・・・・・・・
これは、『Je Te Veux』?
今井さんだ。
本を置くと、僕はすぐに第二音楽室へと走って行っていた。


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