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スパイダー2 [作者:あつこ]

■19

僕の窓際の席からの眺めは最高だった
特に、今日みたいな天気の日には。
青々とした空に、凛とした空気が張って
飛行機雲がスッと空を渡っていた

そんな日は、やっぱり授業なんてそっちのけで鳥の数を数えたり、
飛行機雲を見つめたり、
君を想いながら机に落書きをして、
少し恥ずかしくなって、すぐに消したり。
そんなことをしていたらあっという間に午前は終わっていた

給食を少しだけ残して、

遼が外でサッカーボールを蹴っている音がする

耳をすませば、聞こえてくる
校庭でのボールの音、笑い声
教室でのたわいもないおしゃべりや廊下での騒ぐ声

果てしない空まで耳をかたむける
陽のあたたかさが僕を包む

聞こえてくるのは・・・真実?

窓の外から、上からピアノの音がした
今井さんだ、    
他の誰がどう言おうと、僕には分かった
今井さんの音色だ。

そう、考える間も無く、僕は立ち上がって走り出していた
階段をのぼって、廊下を走って、ひたすら走った

辿りついたのは、第二音楽室。

息切れをして、僕はドアの取っ手に手をかけた

防音加工がされてある、音楽室のドアは僕には重すぎた
開けることが出来ない、
手が、扉に触れようとしなかった

いつもなら笑い飛ばしながら軽く開けてしまうドアが
僕には開けることが出来なかった

音楽室の中からは、いつもの曲が聞こえてきた
僕の大好きな 「Je Te Veux」
彼女の想いのたけが込められている・・・あの曲

でも、今日はいつもと少し違った
いつもスラスラと弾いている曲なのに、今日は何度も失敗している
指がまわらない、音を間違える
小さな失敗だけれど、たぶんそう簡単な理由じゃ無いことだけは分かった


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