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スパイダー2 [作者:あつこ]

■18

「明日なんて来なければいいのに」

僕がそう祈ってるのにもかかわらず朝は、いつもどおりやって来た
こんな日に限ってイヤに早く目が覚める。
今さら眠る気も起きないし、する事も特に無い。

時計を見ると、5時ちょっと前で遼と約束しているのは
7時だからまだ2時間もある
ヒマだなぁ、と思いながら部屋を出て
冷蔵庫の扉を開けて、コップ一杯の牛乳を飲んで
上着だけ着て、
昨日の夜のように
またベランダへ出て、朝の冷気を胸いっぱいに吸った

まだ少し肌寒い、今日は晴れるかな?
ありふれたコトを考えながら外の景色に見とれていた

薄く、もやがかかっていて街中、白いベールが覆ってるようだった

いつもの街が、知らない街になったように見えた。

ベランダに立って、少し見下ろすと犬の散歩に行く人や、
ジョギングに行く人達が見えてなぜか優しい気持ちになって
ココロの不安や、心配事が溶けていくように感じた。
ゆっくりと、僕のなかでろ過されていくのが分かった
昨日、流した涙が僕に微笑んだ

「そっかぁ・・・もう朝だ」小さく僕はつぶやいて、薄く笑った

いつのまにか白いもやは消えて、あたりが澄んでよく見える。
いつもの僕の街
夜は過ぎたんだ、もう朝かぁ
太陽が、空にぽっかりと浮かんでいる
陽の光が、氷を溶かしていく
鳥の鳴き声、目覚まし時計の音
目を閉じて、耳を澄ませば ほら、 ピアノの音色・・・



ハッと目を開けてみると音色と同じくらいに
澄んだ透明の水晶、  涙が、
ツゥッと頬を横切った。

涙で少しだけ濡れた冷たい頬をぬぐって僕は、部屋に入った。
「大丈夫、大丈夫」と自分で言い聞かせながら。


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