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スパイダー2 [作者:あつこ]

■3

彼女としばらく目が合っていた。
何も言えなかった、聞きたいことや話したい事、いっぱいあったのに
僕がそのまま少し下に顔を下げると
彼女が少し笑って椅子に座りピアノの上に手を置いた

≪エリック・サティのジムノぺティ≫・・・

この曲なら嫌になるほど聞いた
君は…そんな顔しながら弾いていたんだね。
知らなかったよ、なんでも扉の向こうから知っているつもりだったのに

悲しげで、優しくって、繊細で、大胆で、、、
でも。美しい。
この音色に僕は溺れていった

僕は散らかっている椅子の1つを立ててそこに座った。
彼女の弾いている顔がよく見える位置に座ったつもり
こうやって見ると、、、まつげ長いなぁ
腕も細い、女の子なんだ。

ピアノの音色と、サッカーボールの音が響き渡る第二音楽室で、
優しい音に溶かされていく
あたたかい…

椅子に座って彼女の横顔を見ると、それはまたキレイで
泣きそうになった。

《見られちゃマズい、泣き顔なんかみせられねぇ》

椅子の上に体育座りみたいに座ってシャツの袖で軽く涙を拭いた
そうしてまた顔をあげると音色が聞こえてきて切なくなる
多分、好きなんだろうな、彼女の事・・・
一つ、ため息をついてみる



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