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スパイダー2 [作者:あつこ]

■7

学校に着いたら、さっきまでの雨はもっとひどくなっていて
やっぱり朝練は中止だった。
教室に入って僕と遼は、何も話さないで雨に濡れた校庭を窓から眺めてた
「この調子じゃぁ・・・午後の部活も無いな。」
先に口を開いたのは遼だった。
いつもの口調で、浅黒い焼けた肌に、白い歯を光らせて言った
「シューズ、持ってこなけりゃ良かったし。」
僕の膨らんだカバンに、僕の青いシューズが入ってるのを見た遼は
「ダッセーの」と言って笑った

そういえば・・・結局今井さんの部活、聞けなかったな。
少し、僕が後悔しながらまた遼と話してたら、
ふっと、あのメロディが聞こえた気がした
≪エリック・サティの、ジムノぺティ≫
気のせいかもしれないけど・・・僕にはハッキリ聞こえた
こんな時間に、なんで?
君が弾いてるの?
外部活の人は、まだ誰も来ていない。僕等だけ
中部活の人は、今頃体育館で活動してるだろう。
じゃぁ、君は―?

「遼、ゴメン。ちょっとトイレ行ってくる」
遼に小さなウソをついて僕はいつもの第二音楽室へ走った
美術室への廊下を走って、階段を降りて、通路を渡って、
また階段を上って…
第二音楽室の前に立つと、やっぱりそこからあの曲は聞こえてた
彼女だ。
こんな時間になんでピアノを?
そう僕が思って、また大きな重い扉を開けようとしたら
泣き声が聞こえたような気がした
この声は、、、今井さん?君なの?
そんなこと考えながら僕は気づかないうちに扉を開けてた

扉を開けると彼女が声を押し殺して泣いていた
見ちゃいけなかったのかもしれない、
でも黙ってまた扉を閉める事も出来ずに、僕は立ち尽くしていた
「・・・誰?誰かいるの・・・?」
今井さんが目を擦りながらこっちを振り向いた
僕は、恐くなって扉を閉めて音楽室を出た。
今井さんの泣き顔、泣き声、あの涙。
何があったんだろう?今の僕じゃ分からない
遼だったら、聞けたのかなぁ?
遼だったら今井さんに優しい言葉をかけたり、慰めたり、
笑わせてあげること、出来たのかな?
自分は、無力なんだ。



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