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マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第21章 

後に聞いた話だが、兎山は前日にエスパーのボスより一つの指令を受けて、その最中に催眠術をかけられていた。

…当然彼は、催眠術のことを知らない。もし、催眠術にかけられていなかったら、こんなところで俺と戦うなんてことはしてなかっただろう。
…自分のしばらく会っていない甥と。

…とにかくそのようなことを知らないまま、兎山は戦っていたのである。少なくとも10年はあっていない、
そんな甥を相手に魔法で鎌鼬を起こし続けてるのだから正気に戻ったときにぞっとしただろう。

…幸か不幸か、俺は気付いていなかったのだ。聞いたことがある名前だと思いつつ奮戦していた。

「風って空気の流れ。…単純に言えばね。でも空気って強いんだよなぁ」

七色は呟きながら強烈な北風を吹かせてきた。まさか、飛ぶか!?なんて思いそうになるほどの突風であった。

しかし、北風があれば南風もあるものである。俺は負けじと南風を魔力を用いて吹かせた。

…不思議なことに2人の間に上昇気流が出来上がったではないか!空気と空気がぶつかり合って逃げ場を上空にしか残せなかった。

「…隼、掴まれ」

翼はそう呟いて、ボロボロのジーンズを履いた脚を出してきた。

「…脚、しかも男のってのが気に食わないけど仕方ねぇな。」

翼を得た隼は上昇気流にのり、高く舞い上がった。

翔んだ俺は上った空気を集め、全てを七色に向けた。

「疾風撃!」

吹かす風を失っていた七色は防ぐ余裕もなく地面に叩きつけられる格好になった。

七色は二度三度撥ねたが四度目は無かった。隙を見た桃川が全体重を乗せてアッパーをかけたのだ。

七色は空の向こうに消えて行った。…しかし、七色の出した風が突如行き場を失い、渦を巻いた。

「…これが俺の最後の道連れだ。」

風が七色の代わりに囁いたようだった。俺たちは慌てている間に風に飛ばされた。

桃川やゆうひ、翼も、みんな別方向に飛んでいるようだった。唯一の救いは、
四人とも前方向…エスパーの本拠地に向かってることは間違いないということだった。

翼だけは飛ぶのかと思ったがそんな様子は見られなかった。実はダメージを主に受けてたのは、七色に近づいていた翼だったのだろう。

ゆうひは何か呟いているようだった。意外と冷静なものである。…昔は観覧車で泣き出すような子だったのに。

桃川というと…何も考えず瞑想のフリをしているようだった。

みんなの姿を確認した俺は、飛んだ。誰よりも早く飛んでいることに気付いた。

「また落ち会おう!」

そう言ったつもりだが聴こえてはいないらしい。

でも俺らならもう一度会えると信じてた。

↓目次

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