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マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第20章 

隣街までの道は酷く壊れていた。

早くも桃川は息切れ気味だったし、ゆうひもかなりツラそうだった。翼も、三人を置いて先に空飛んでいきたいというような顔をしていた。

「…なぁ、こんな険しい道使って、いつもエスパーのやつらは来てるのか?」

巨体が今にも朽木の如く倒れそうな桃川が言った。

「さぁな。道の状況から考えると、ここまで酷くしたのはここ最近のようだ。」

翼は答える。

「そして、俺達みたいに歩いてなんか来ないだろうよ。空飛ぶ能力とか瞬間移動能力とか持つやつがいるだろうし、下っ端の奴等も頑丈な車みたいなの使うんだろ。」

「バイク使えばよかったなぁ、俺。」

ふと、俺は呟いてしまった。

「それなら俺は一足先に飛んどるわ!…そしたら君の大切なゆうひと桃川が残されることになるが、いいのか?」

「絶対に嫌だな。」

即答する俺を見て、翼は苦笑する。桃川には俺に反論する気力はもはやなかった。

「…にけつでゆうひを乗せちゃまずいか?」

「おうおう!正義のヒーローがそんな小さい、交通なんかで罪犯していいのか」

翼が笑って答えている。

「小さいことなんざ気にしねーよ。だいたい好きで正義なわけじゃいし、正義だと思ってやってるわけでもねぇよ」

「だな、あちらからすりゃ俺らが悪だ」

それからしばらく沈黙が続く。風に揺れた木の枝と寒い北風の音が回りに鳴り響くだけだった。

しばらくすると風が異常なまでに強くなっていた。吹き飛ばされるとまでは行かなくても真っ直ぐあるけないような強風が吹き荒れた。

「なんだよこれ!」

叫んだが音も飛ばされるようだった。

砂埃や落ち葉がまきあげられるなか、かすかに人影が見えた。

「誰だ?」

影に声が届いていないのか、変わらずそれは動じずに立っていた。

その次の瞬間、影は消え、それと同時に、左肩に鋭い切傷の痕があった。

「ぐっ…!」

流石に苦しかった。おそろしいほど痛むし、血が止まらない…。

「…苦しいか?」

見えない影が訊いて来た。

「誰に殺されたか、知らないで逝くのもなんだろうから、教えてやる。エスパー七番隊副隊長の兎山七色だ。兄は二番隊長を勤めていて、私は君と同じく風を使える。」

兎山…親戚でそんな苗字がいた記憶があった。しかしそんなこと考えている場合ではなかった

  「うぁぁぁぁ!」

必死の力を込めて俺も風を返した。

「ふぅん…やるねぇ少年。」

兎山はまだまだ余裕そうだった。

↓目次

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