マフラーマン [作者:larkheart"95]
■ 第16章
この少年を倒せ。そう長老は言ったがどう見ても普通の少年だ。
「万が一、この少年を殺してしまいそうになったらわしが時を戻してやっても良い。…まぁそれが出来ればの話じゃが。」
なんだこの余裕。正直俺はそう思ったし、翼たちもそう感じてるのが見て取れた。
「では、失礼ながら!」
翼が飛び、何やら黒い羽が舞いそれらが少年に降り注ごうとした。
俺はライブハウスの外で翼がマジ顔になってるのは始めて見たし、技もオーロラ倒したとき見せなかったから少し技の美しさに酔った。
飛んだ羽の根元が少年に刺さり蜂の巣になる!と思われたがすんでのところではらりと羽は落ちた。
何故だかわからない。とにかく勢い良く飛んだ羽が止まったのだ。
俺も試しにブラスターを放ったが畳を禿げさせただけで少年に届かなかった。
桃川が力任せに少年に飛び掛り、ぶん殴った。しかし、殴っただけのダメージで、それ以外はなさそうだ。
「ひひひ…そんなもんじゃろう?」
長老は予想通りと思ったらしくちょっとご機嫌だったのが腹立たしかったが抑えた。
「この子の名は魔滅 ホタル。偶然私の苗字とこの子の名前が同じなのでの、預かっていたが…」
少年は桃川に殴られた頭を痛そうに押さえながら長老を見ていた。
「世にも珍しい魔力封じの魔力を持っていたので君たちの修行に使えるかと思っての。」
「長老!」
いきなり、慌てて翼が半分叫びながら呼んだ。
「魔力封じなら…長老の時間魔法も通用しないんじゃないのですか?」
また長老は笑った。その質問を待っていたといわんばかりに。
「この子はまだ幼い。わしほどに熟練すれば破れるよ。だからこの少年を破れるくらいには君らにはなってもらわんといかん。」
…つまり、俺らの能力はまだまだ弱いということか。だからこの少年の魔力防ぎの魔力を打ち返さないことには今後のエスパーの強敵は倒せないと…
「僕…姉…二人いる」
殴られた痛みをこらえながら少年が口を開いた。
「どこいったかわからない。もしかしたらエスパーに…お姉ちゃんのほうが僕よりもっと強いからどうなってるか、利用されてるか心配なんだ」
…沈黙が流れた。兄弟離散。そんなことも現実なんだなと、ショックを受けた。
「ようは…」
桃川が重そうに立ち上がって言った。
「防ぎようが無いくらい俺らはガンバレ!ってことで、この坊主の姉がどうなってるか探せってとこだろう?やりゃあいい。」
そういって、笑った。
「じゃあ、頑張るか!」
俺もこんな空気は好きじゃないが乗った。それが物語ってもんだから。
「私が何でも治せれば…」
ゆうひがゆっくり立ち上がった。そして、俺が禿げさせたはずのボロボロの畳が綺麗に直っていた。
「急ぎ、訓練じゃな。」
長老がそう言って部屋から出て行った。
↓目次
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