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マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第6章 〜あの娘に似合いそうな花〜

川からの帰り道、俺は眠っていたらしく、目を開けたときにはもう太陽は沈んでいた。
俺は新宿に着いて後、ヒカリさんの会社の系列にあるビジネスホテルでまた一泊してから帰ることにした。
さて、俺は帰路に着いたのだが気分は高ぶっていた。平和そのものの東京から地獄のような俺らの街に帰るとしても、だ。
俺一人でエスパーと戦うわけではないし、妖精もついた。そして街へヒカリさんからポケットマネーで支援が送られることになったことも安心できる。
そう思いながらバイクにまたがった。すると、

「待ちやがれ!」

見ると、ハンドバックを持った男が走っており、それを別の、花束を持った男が追っていた。
たちまち、逃げていた男は追っていた男に脚払いをくらい、ハンドバックを奪われた。

「今日みたいなめでたい日にこんなくだらねぇ真似するんじゃねぇ。わかったか?」

そういって、追っていた男はハンドバックを持って引き返した。すると後ろから…
グサッ!…
追われていた男がナイフで振り向いた男のわき腹を刺したではないか!俺は焦った。
犯人を追うのか?それともこの人を助けるのか?それとも面倒なことは避けてさっさと街へ戻るか?

…いやだ、こんなの見逃せない!

直感的なものだった。気づけば俺は犯人に対してブラスターを放っていた。
犯人は再び足元をすくわれた形で倒れた。どうやら、軽傷で済んだようだ。すぐに携帯で警察を呼ぶことにした。
すると、パタパタと音を立てて、小太りな、どこにでもいるおばちゃんが走ってきた。

「あっ、私のバッグ。取り返してくれてありがとうね。引ったくりって怖いものね…あれ?最初に追っかけてくれた若い人はどこに?」

俺は急いで現場に戻った。犯人が倒れているところには既に野次馬が十重二十重に囲んでいたし、警察も到着するだろうからほっといた。
しかし、現場には少し散った薔薇の花びらと、同じくらい真っ赤な血で遊歩道のレンガが染まっていてそのほかにはもう何も残っていなかった。
刺された人はどこへ行ったのだろう…見た感じかなりの致命傷だったのに。

「ちょっとボク、ここで何がおきたんだい?この犯人の発言と照らし合わせて事情を聴きたいんだけど?」

バイクで警官に従いつつ交番まで行って、半分パニック状態の犯人とともに何があったのかを話した。
犯人も現行犯なだけに素直だったが俺は終始、刺された人が気がかりだった。
だらだらとした事情徴収に半分俺はキレかけていてついにこう口を開いた。

「すみません!刺された人は今どこへ行ったのですか!」

警官の手の動きが止まった。そして顔を上げて僕のほうを見た。

「君の知ったことじゃない。」

「それでも、俺はあの人が心配なんだよ。警官なら何か情報入ってんだろ?」

「…」

沈黙が続いた。隣で犯人が荒々しく呼吸している。どうやら花屋で客のバッグをひったくったらしい。

「…披露宴のベンチで意識不明の重態になったから運ばれてるらしい。」

愕然とした。それを冷静に言う警官が怖いしそんな街であった東京が怖かった。

すると、後ろからヒカリさんが現れた

「この場は私に任せて。あなたは早く帰りなさい!」

「でも、あの人が…」

ヒカリさんは首を横に振った。そして手を俺の肩に置いた。昔の母さんみたいだった。

「いいから、…気にしないで行きなさい。こうしているうちに街が大変なことになってくのよ。」

あきらめた。そして、どう考えてもヒカリさんの言うことに理があった。

「わかりました。それではまた会うときに」

大人しくバイクに跨って俺は北へ駆けていった。あの人の正義はきっと忘れない。

↓目次

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