マフラーマン [作者:larkheart"95]
■ 第8章 〜振り向かず目を光らせて〜
「んなの大丈夫だろうが。ピンポイントに撃てばいいじゃないか」
「いいや、確実に延長線に伸びていく。これは厳しいな…」
俺らは対峙しつつ考えた。
「あら坊やたち、動けないの?」
オーロラからは余裕の笑みが浮かんでいる。…なめきってるな?
「…翼、後ろ乗れ。」
俺はバイクに跨りグルーヴィーにエンジンをふかした。
グルーヴィー、なんだかいい響きなのだ
「おうよ、音より速く頼むぜ」
「あぁ、光の速さで飛ばすさ」
「なにをごたごたと!」
俺はすぐにバイクで飛ばしたがオーロラはそれとほぼ同じ速度で追いかけてきた。
地面の上をすべるように。まるでドライアイスの等速運動実験みたいだった。
行き着いたその場所は郊外の崖の下だった。むかし地学の観察で訪れたことのある荒地だった。
「ここでいいだろう。さあ、かかってきな」
俺はオーロラを見て言った。
「ふふふ、まぁ貴方が追い詰められてる形ね…窮鼠猫をかむと?」
「冗談言うな。窮ウミネコ、隼を噛むだろ!」
そばでまた翼が挑発をする。
「黒田…貴方から死んでもらう?」
そういいつつもオーロラはごっついハンティングナイフを取り出し翼に襲い掛かった。
「翔!」
翼が一言叫んだ。
すると彼の体は浮き上がっていた。…飛んでる!
「何?!」
勢いあまってつんのめったオーロラ。その隙を見落とすわけには行かない。
「熱風刃!!」
俺はオーロラに唱えた。そのあとはあっけない。全身に切傷を受け飛ばされたオーロラは崖に叩きつけられ失神した。
「はん!やっぱり雑魚だな…」
翼が舞い降りてそう言った。
「おめぇは避けただけだろうに」
「ちょっ!でもお互い無傷なんだから大したことはないのは確かだろ」
「まぁな。…しかし、秘書ってことは隊長が別にいるってことだよな。」
「何言ってんだか隼。副隊長だっているしそのしたに幹部だっているのさ」
俺は閉口した。まだまだ先は長いんだ。
初冬の頃だが夜も遅くオリオンが南に見え始めた。蜜柑色の満月も南西で僕らを照らしている。
綺麗な夜空…こんな空気も綺麗なこの街を誰にも汚されたくない。空気だけじゃない。
しばらくしてから俺は口を開いた
「お前のその能力、羨ましいな。」
翼は振り向き微笑んだ。
「なんだよ、そこで羨むなよ。まだ技だって披露してないんだぜ。」
俺らは高らかに笑った。戦いも俺らの談笑も見ていたのはただ猫一匹だけだった
↓目次
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