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マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第1章〜寂しいあの街〜

「藍川!あっ、また逃げやがったな!」

とある高校の正門近くである。
グラサンかけた怪しい二人組みが唸っている。
街ではイルミネーションの飾りが始まり、そろそろ本格的に寒くなるといったころだった。
しかし、街は普通に比べてかなり寂しい街だった。決して寒いからではない。もっと恐ろしいものだった。
追われている藍川という少年、昔から只者ではなかった。…というよりは彼とその周辺の一族は皆不思議であった。
「魔法」である。彼らは一人一人、特殊なパワーを持っていた。そのことについての説明はここでは省かさせていただこう。
藍川隼、17歳。名は体を現す。そういうかのごとく俊敏な少年である。
しかし、彼の魔法は足ではない。
手に意識を集中する。それだけで爆風が吹くのだ。
このことは誰にも知られていない秘密だった。
それはさておき、彼は一軒の家に向かっていた。

「あっ、藍川君。どうしたの?」

出てきたのは隼と同年齢ほどに見える少女だった。

「いやぁ…たださ、赤星一人じゃ大変だろうからさ…手伝いに…」

「そんなに困ってないわよ?まあ、あがってよ」

「じゃあ遠慮なく…お邪魔します」

彼女の名前は赤星ゆうひ。中学生以来の知り合いなんだけど、今は両親がいなくなって一人ぼっちだった。
ばれてるって分ってる。でも俺はゆうひが好きだった。

「疲れてそうね…やっぱりエスパーの監視が強化されてるの?」

エスパー。選挙もなしに、半ば強引にここを統治している集団であり、謎に包まれている。首領が誰であるのかさえわからない。
奴らが来てから街から活気が消えた。

「ああ、なかなか酷いもんだぜ。…もっとも俺の足には誰もかなわないし、バイクだってある。」

俺のバイク。俺がゆうひの次に大事にしているものである。稲妻のマークが気に入っていた。

「バイク気をつけてよ?雪も降ってきたじゃない。」

気づけば六花が舞い降り始めていた。

「寒い時期になってきたわね…あ、そうだ!これ…」

ゆうひは箪笥からなにやら赤いものを取り出した。

「マフラー…編んだから使ってくれる?」

緋色のマフラーだった。多少、歪んでいる所はあるが仕方ない。ゆうひだって時間がないのだ
それよりも何よりも俺はゆうひが俺のために作ってくれたことで胸がいっぱいだった。

「ねえ、隼。お願いがあるの…」

俺は驚いた。何故って、ゆうひは俺を名前で呼んだことはなかった。

「私のために…街のみんなのために戦って!」

俺は驚き、また困惑した。むしろ鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う。
…告白と捉えていいのかな?先言われたの?
そんなことばかり考えてるうちにゆうひは続けた

「そしたら…寂しい街で一緒に暮らそう…一人じゃ生きてけない!」

そう言うとゆうひは泣き崩れて僕の胸に倒れこんだ。
俺はただそれを受け止めて耳元でささやいた。それだけで良かった。
俺が何てささやいたかって?言うまでもない。
これがあんなことになるなんて誰も想像出来なかった。

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