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マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第9章〜表の意味を越えてやる〜

深夜に戦っていたので疲れがどっとたまり眠く、意識が朦朧としていたにもかかわらず、気づけば東のほうが明るくなっていた。
フラフラと危険走行気味だったがなんとか家にたどり着いた俺は寝た。バイクを止めたことも、ベッドまで歩いたことも記憶には残っていなかった。
しかし、程なく起こされた。電話だ。

「もしもし、隼君?ゆうひだけど…」

ゆうひかぁ。そう思うといくらか目が冴えた。でも半分寝ぼけてる

「あぁ、ゆうひか。どうした?」

「えーと…あの…今日、出かけない?」

来た!デート来た!眠いけど楽しみには変えられない。

「あぁ、いいよ」

「じゃあ、うちまで来て」



俺は徒歩でゆうひの家に向かった。首に貰ったマフラーを巻いて。
バイクに乗ったところでどうせまた歩くんだし、今は歩きたい気分だった。
ゆうひは門の前で待っていた。

「お待たせ。じゃあ行こうか」

僕らは歩き出した。ゆっくりと、無言のまま、手もつながずに。
しばらく歩いて繁華街の前に来たときに初めてゆうひが口を開いた。

「昨日の夜にうちの近くですごい音が鳴ってたけど何があったかわかる?」

オーロラのことか?まあ話しても問題はないだろうと判断した。

「エスパーだよ。」

歩きながら俺は返答した。小石を蹴飛ばして

「エスパーの小隊長の秘書と名乗る奴が襲い掛かってきたから…翼と協力してな。」

「あ、そうだったの。」

ゆうひが俺の蹴飛ばした小石を見ながら言った。

「怪我とか…ない?」

「ああ、まったく。簡単な敵だったさ」

「…ホントに強いのね。私、隼君がいれば何があってもきっと大丈夫だと信じてるから。」

また自分の顔が赤くなったのを感じた。気づけばゆうひは俺と腕を組んでいた。…周囲など気にすることもなく。

「私、長老に隼君がいないと外に出ては駄目って言われたからずっと家の中で寂しかった。」

なるほどね。長老は流石にいろいろと考えてくれるんだなと察した。

「それから、長老の弟子みたいな子がいざというときの隠れ家を作ってくれたし、私のために。」

…きっと俺のことを思って長老はこんなにしてくれたんだ。ゆうひに何かあったら俺にはまともに戦える自信は無かった。

「でも、やっぱり隼君といたほうが楽しいもん!」

ここまで言われると俺の生存価値は決まったようなものだ。ゆうひを守ることにすべてをささげる。以前から誓ってたことだが再確認できた。

「ありがとう。」

俺はこう言うのがやっとだった。嬉しくて涙がこぼれそうだったがこんなところで泣いてはいけない。わかってるさ
もう少し優しい言葉を言いたかったが限界だった。
ゆうひがキャッと小さな声で叫んだがすぐに黙った。
ほんの一瞬の時がゆっくり流れた。
繁華街もエスパーのせいで人が減る一方だった。閉鎖した店もある。
そんな寂しい街のなか、二人きりで俺はゆうひを抱きしめた。離さないこのまま時が流れても。

↓目次

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