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マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第10章〜他には何も入らないように閉じ込められている〜

それからの俺とゆうひは無口だった。ただ手をつないで歩いていた。
チラシを木枯らしが吹き飛ばす繁華街の跡を。もはや活気の薄れたこの道を。
歩行者は少ないのだが、さっきから異様な格好をしている奴がいた。
全身真っ黒の服を着て、顔をフードで覆い、下はロングスカート。しかし体格はどう見ても男だった。
時々舌を出しては、ピアスが光に反射してまぶしかった。
そんな奴が俺らと並歩していることに気付いた。…これは怪しい
ゆうひは俯いたままでまったく気付かない。
気付いてから50メートルほど歩いた瞬間。パチン!と音がした。
俺はそいつの方を振り向いた。…倒れてる。胸から血を流して。
すると今いる場所から数件先の店の屋上に人が立っていた。なんだか変なものをもって…遠くからではよく確認できない。
気付けばその人はこっちに目をむけ、変な武器のようなものを掲げた。

「危ない!」

とっさに俺は叫び、ゆうひに覆いかぶさりながら避けた。
振り向くと半径三センチほどの穴がコンクリートにあいていた。
ゆうひは目を閉じている。小刻みに震えながら。とっさに倒したせいで服が汚れていた。

「…ごめん、大丈夫?」

俺はゆうひに聞いた。ゆうひは震えながら軽く頷いた。

「おやおや、君はいい反射神経をしているねぇ」

さっき屋上にいた人間だ。ゆっくり歩きながら俺に話しかけていた。

「誰だ貴様は。またエスパーか?」

そいつは薄笑いをうかべこういった

「そうでもあるが、そうでもない。」

「どういうことだ?」

俺はさらに聞いた

「別に…支配者には義理もないけど、ここの統治者も好きじゃないから手を貸してやってるわけだ。無政府主義者な者でね。」

なんてこった。ただ戦うだけの奴か。俺は正直焦った。変に忠誠誓うよりこういう革命家はホントに手ごわそうだと感じた。

「しかし、少年、驚いたろ?今、俺が発射したのは泥なんだぜ?泥が人の胸を破るどころかコンクリを貫くんだぜ?」

…能力者か?本来は俺らの仲間なんじゃないのか?俺はそう思っていた。

「なぜ、あの黒い人を殺したんだ?」

「ん?アレか。あれは役人だからさ。」

さらりと奴は答えた

「んまぁ、あいつも少年の命狙ってたけどね。俺はあいつが嫌いだったから殺っといた」

驚いた。敵の敵は味方とは限らないようだ。

「そしてまぁ少年にも死んでもらおうか。私の名は泥座敷喜八。まぁイケてねぇ名前だが突っ込まないでくれるかな」

そう言いつつ、喜八は武器を向け泥を撃った。反射的に俺のブラスターが迎え撃ち、泥は辺りに飛び散った。

「なかなかやるねぇ、少年。」

気付けば、ゆうひは俺の背中を掴んで離さない。かなり怖がっている。
だが喜八はその存在には気付いていた。

「あらら、少年が俺の攻撃避けちゃうとその少女に当てたくなっちゃうんだよねぇ。」

対峙しながら奴は言った。

「まぁ胸に厚みがあって貫き甲斐がありそうだわ。避けられるもんなら避けてみな!少年たち」

また、泥が撃たれたが俺は完全にキレた。今の発言は許せない。

俺は飛んできた泥を殴り飛ばした。
べちゃべちゃと泥が喜八の顔に付いた。俺の手から血が出たがそれは関係なかった。

「ふふっ、意地でも泥を通さない気ですね」

泥だらけの奴はこう言って余裕の笑みが浮かんでいた。
逃げられない。今はゆうひを守って戦うしかないのだと考えると、少し動揺した。

↓目次

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