マフラーマン [作者:larkheart"95]
■ 第14章
〜今ここにいる〜
シュパッ!という音と同時に視界が赤くなった。謝の放った矢は俺のこめかみに掠っていた。
意外と早く弓から光のような矢が離れ、気付けば顔の半分が血まみれになっていた。
「あら、ボウヤ、綺麗なお顔が台無しね。でもそれもそれでカッコいいわよ?」
俺は謝を睨んでいた。左目はいまや上手く見えていなかった。それでも今は嵐がやんでいた。
「諦めて縄についたら今夜遊んであげても…」
言い終わらせないうちに、ブラスターを放った。謝は数メートル後方に吹き飛び、ただでさえ露出度が高かった服はもはや限界に近かった。
「…汚い身体…曝け出すな。」
自分の発言とは信じられないような言葉が躊躇いも無く飛び出たことに俺自身で驚いた。…俺でも何でも言えるんだな
「よくも…!」
謝は立ち上がって叫んでいたが、完全に声が裏返り始めていた。
砂塵が舞い上がり、再び視界が見えなくなっていた。矢が飛んでくる…しかし、集中力の欠いた矢には威力も正確さも失われていた。
飛んできた矢を俺はにぎっていた。怖くない…この傷の分の借りは返さねばならなかった。
矢を手のひらに乗せ、全身全霊の力を込めてブラスターをもう一度はなった。
砂塵は乱れ不安定な空気となったが、ブラスターに乗せてとんだ矢は、謝の弓を破壊した。ビシッ!という音を立てて粉砕していた。
それ以上の手出しは無用だった。謝は唖然と立ち尽くしたかと思えば泣き崩れ、声にならぬ声で俺を罵倒しようとしたが無駄だった。
顔を高潮させながらいつまでも喚く、謝の前を鳶起が立ちふさがるように立った。
「ふん、小僧が…噂ほどではないがまぁ実力は認めておいてやろう。」
鳶起は静かだが、ただならぬ雰囲気を感じた。
「怪我してる奴を追い討ちにするなんてのは性分にあわねぇから、今日は帰るぞ。また会おう…その日が君の最期だろうがな」
そういって悠然と去る鳶起と…彼に担がれる謝を俺はただ見送っていたが、どうも血が止まらなかった。
敵わず、俺は荒れた草の中に仰向けに倒れ眠りに落ちた。
↓目次
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