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マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第12章 〜君の夢を覗いたのさ〜

その後、ほぼ失神に近いゆうひを抱え、俺は家に帰ることにした。
勝手にゆうひの家に入れないし、自分の家で安静はかる分には心配ないだろうから。
そして一人思った。こんなこと、昔のにぎやかな街の中では出来ないなぁと。
前にゆうひを抱きかかえて俺は顔が熱くなるのを感じながら家に帰った。ゆうひはぬいぐるみのように軽かった。
日も暮れて暗く、真っ白でぽつぽつとたっている外套しか外がみえない夜だった。
とりあえず何か夕飯を作ろうと思った。冷蔵庫の中にはタマゴとちょっとした野菜と、それからキッチンに米と小麦粉があるくらいだった。
食材を前にして少し唸っていたのだが、その間にゆうひは起きていた。
俺はあわてて水をさし出した。やっとゆうひから微笑みがかえってきて嬉しかった。

「うん、私が作るから隼君は休んでて大丈夫よ。疲れたでしょ?」

ゆうひの作る料理?!俺はとてもわくわくした。ふと、同棲っていいだろうなと思ってしまったりもした。

「あぁ・・・じゃあお願いするわ」

俺はそう言ってそのまま寝てしまった


「…隼君?ちょっと?」

ゆうひのモーニングコール(ただしまだ夜)で俺は眠っていたことにそのとき気づいた。

「あぁ?・・・まだ夜か」

完全に寝ぼけていた。時計を見たが僅か90分しか過ぎていないことに気づく。

「ご飯…できたんだけど。冷めちゃったらやだなーって思って。」

「ありがとう。」

すでに配膳されていたことにちょっとした暖かさを感じた。二人で向かい合って食べた。
正直言ったところそこまで旨いというわけではないのだが、よかった。機械的に作られたものとは違うのだと。
十数分後には食べ終わった。

「おいしかったよ。」

俺はそれだけ言った。寧ろ有頂天のあまり言葉がすぐには出なかった。ゆうひも頷いただけだった。
寝るために布団を敷いたが少し距離を置いて敷いた。…それ以上の勇気は無かったし。
敷いて間もなくゆうひは静かに眠りに落ちてしまった。何かに安心したように、微笑みながら掛け布団を抱くようにして眠っていた。
俺は少し外にでて空気を吸った。いい夜だった。
突然、不思議な音がした。音の方向に振り向くと矢が土に深々と刺さっていた。…矢文だ。

『明日の夕刻四時に南の荒地にて勝負を申し込む。 エスパー8番副長』

一人で戦おう。そう心に決めてから部屋に帰った。相変わらず幸せそうにゆうひは寝ていた。起こすまいとして俺も静かに眠りについた。

↓目次

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