スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説マフラーマンTOP>第2章

マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第2章〜いびつな力〜

その日は朝帰りになった
…きっと親は怒るだろう。そう思って俺は苦笑いしてた。
家の鐘を鳴らす。しかしさえずる鳥の声しか聞こえない。
…まだ起きてないんだろう。そう思ってドアを開ける。
なんだよ、開けっぱなしじゃないか…俺は家に入ったが驚愕のあまり言葉を失った。
家が荒らされてる。親が消えている。机に紙が置いてあった。

『貴様を徴用する代わりに親をいただいた。悪く思うな。 エスパー二番隊長』

やはりそうか…ゆうひの親もこうなったんだよな。
俺は悔しかった。誰一人守れそうもない自分は何もできない気がした。
ただ、ゆうひだけは絶対。
俺が出来ることは何だろう…すると後ろから声がした。

「しけた顔してんじゃねーよ。親がいなくなったって気にするなよ。取り返しに行けばいいんだよ。」

振り向くと長身で…そのほかは大して挙げる特徴もないような少年が笑っていた。
長なじみの黒田翼だった。彼はいろいろな意味を含めて切れ者であり、それでいてすべてにおいて強かった。
彼を表すには「強」という文字以外にはなかった
彼もつい先日、親が強制連行されたはずであった。なのに今の発言は解せなかった。
木枯らしが吹く中一瞬だけの沈黙が流れた。一人が唖然とする一方で片方は微笑んでいた。はたから見れば少し可笑しい状況だった。

「おまえの親も連行されたんだろう?お前は取り返しに行かないのか?」

「親なんて関係ねーよ」

翼はそう言ってガムを噛み始めた。

「たださぁ、親が消えただけで震え上がってるチキンハートはどういった行動取るのかと思ってね。」

「何が言いたい?」

鼻だけでなく怒りにより顔までも赤くなるのを感じながら言った。

「ん?どうせならよー、町全体を救ってみろって事だよ。…ったく、肝心なときに親友を役立たせてみろよ。宝の持ち腐れだぜ。」

「つまり、俺とお前でエスパーと戦うと…?」

「まぁ、そういったとこだ…。俺の舎弟含めればもっと多いか。」

風は強く吹き続いていた。そんななか拍子抜けするようなメロディーが鳴り響いた。

「あっ、電話か。…この曲も作曲ミスだな。あ、もしもし…あぁ、桃川?」

翼は音楽好きで、ロックバンドを組んでいた(メンバーは彼の舎弟らしい…)。自分の作った曲を着信音にしてるらしかった

「うんうん、承諾してくれたよ…んじゃまたな。」

翼は震える手で電話を切った。

「言い忘れてた。桃川も仲間だから」

桃川海。軟派で少し苦手な奴だったが翼を仲介にやっと仲良くなれたような奴だった。
一時期ゆうひを狙っていたらしいが今は別の女子を追っかけていた。

「…で、人数はこれでいいと仮定しても徒手空拳とはこのことじゃねぇの?」

俺は言った。実際複数人仲間はいるがエスパーの強大な勢力相手では徒手空拳も同然だった。翼はうなずいた。

「そのとおり。だから一つ案がある。うちの町のじーさん…もとい長老に助言をもらうんだ。」

「長老?!もはや死にぞこないじゃねえか。」

「いいから、それがいいんだって。長老の言うことは町では絶対なんだからな!」

信じるしかなかった。正直俺なんかじゃあ作戦も何も思いつかない。助けたいという気持ちだけが先走るだけだ。

…一人でも多く皆を守りたい。そんな思いを胸に、長老の家に向かうことにした



↓目次

【プロローグ】 → 【第1章】 → 【第2章】 → 【第3章】 → 【第4章】 → 【第5章】 → 【第6章】 → 【第7章】 → 【第8章】 → 【第9章】
→ 【第10章】  → 【第11章】  → 【第12章】 → 【第13章】  → 【第14章】 → 【第15章】 → 【第16章】 → 【第17章】 → 【第18章】
 → 【第19章】 → 【第20章】 → 【第21章】 → 【第22章】